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2024年10月第5週・11月第1週 の 編集人コメント

​​ Booking Holdingsの第3四半期決算が発表された。増収(+9%)・増益(+9%、調整後純利益)と好決算を継続させている。

この決算で、CEOのGlenn Fogelは、4つの重要なイニシアティブとして、(1)代替宿泊施設、(2)コネクテッドトリップ、(3)AI活用、(4)アジア展開を挙げている。

 

各イニシアティブの要約を以下に記す。

​(1)代替宿泊施設:Booking.comの代替宿泊施設の掲載数は第3四半期末時点で790万件に達し、前年比10%増加した。ホテルと代替宿泊施設の両方を提供することで、旅行者に幅広い選択肢を提供している。

(2)コネクテッドトリップ:旅行計画から予約までを簡単にする「連結された旅行」のビジョンを推進しており、旅行者が複数のサービスを一度に予約するこのトランザクションが40%増加している。これにより、リピート率や直接予約の割合が高まっている。

(3)AI活用:Booking.comやPriceline、Agodaなどで、AIを活用したチャットボットやカスタマーサポートの効率化が進められ、ユーザー体験が向上している。生成AIを利用した新機能も開発中である。

 

以下に各ブランドのAI活用状況を書く。

Booking.com

Booking.comは昨年、AI Trip Plannerを導入し、ユーザーから得た膨大なデータと生成AI技術を活用し、自由入力で200以上の検索フィルターが使用できるSmart Filterなど新機能を開発した。生成AIは、宿泊施設側の対応もサポートし、旅客メッセージの回答率を向上させている。また、カスタマーサポートにも導入を進め、効率化が期待されている。

Priceline

PricelineではAIアシスタント「Penny」が300万件以上のインタラクションを行い、旅行計画や宿泊検索をサポートしている。さらに、音声対応の「Penny Voice」を導入し、リアルタイムの音声で旅行者を支援している。

Agoda

Agodaは120以上の生成AI適用事例を導入し、顧客サービスや開発の自動化を進め、開発生産性を向上させている。

Kayak

Kayakは「Ask KAYAK」ツールで自由入力による検索体験を向上させ、スクリーンショットを使った価格比較ツール「PriceCheck」も提供している。¶

OpenTable

OpenTableではAI音声ボットを導入し、予約や問い合わせに対応している。また、Salesforceとの提携により、複雑な状況での顧客対応を強化している。

 

​(4)アジア市場:アジアは成長性が高く、Booking HoldingsはBooking.comとAgodaの両ブランドで市場シェアの拡大を目指している。現在、アジア地域の予約が全体の24%を占め、パンデミック前よりも増加している。

 

この好決算を反映して、Booking Holdingsの株価は年初来の高値をつけている。時価総額は1,571億ドル(約24兆円)となった。

 この決算で、もう一つ触れておくべきことがある。それは同社のCapital Return Programだ。増収増益が生み出すフリーキャッシュフロー増を活用して、自社株(金庫株)購入を継続して実施している。今期では53億ドルを自社株購入に費やし、発行株数のほぼ半分の48%を金庫株とした。このほか、貸借対照表上では、8.9億ドルの配当を計上した。

 

Expedia Groupの第3四半期決算は、11月7日に発表される。現時点のExpedia Groupの時価総額は207億ドル(約3兆円)で、Booking Holdingsの13%である。

 Expedia Groupを買収すると噂されているUberの第3四半期は絶好調だ。史上最高の営業利益11億ドル(前年同期比+69%)、調整後EBITDA 17億ドル(前年同期比+55%)をそれぞれ計上した。しかしながら、依然として、この四半期末でも累損276億ドルを抱える。

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