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​2025年 6月第2週の編集人コメント​

Phocuswright Europe Conferenceが、6月10日~13日、バルセロナで開催された。今週の記事の多くが、この会議の模様を伝える。もちろんトラベルテックのAIが、この会議の主題となっている。(今週の記事で「AI」は227回引用されてる。記事数は20なので、1記事に平均約3字の「AI」が使われている。

 

今週の閲覧者数最大の記事「4. 旅行業界、エージェンティック・コマース準備整っているか」もAI関連だ。これが、次のようなことを言っている。

旅行業界に「Agentic Commerce(AIが自動で購入を行う仕組み)」の波が迫っている。Visa、Mastercard、PayPal、Googleなどが相次いで対応技術を発表。旅行予約でもAI Agentが人に代わって決済・予約を行う時代が近づいている。

業界はまだ準備不足だが、SabreやStripeなどが支払いインフラを整備中。今後は新たな予約チャネルが爆発的に増えると予測されている。

課題は信頼性とセキュリティ。消費者の信用を得るには、AIに明確な権限設定と支払い情報の管理が必要。とはいえ、中小企業も恩恵を受けられる可能性があり、旅行業界全体に大きな影響を与えると期待されている。

 

Agentic Commerceとは、AIが人間の代わりに自律的に商取引を行う仕組みを指す。旅行分野におけるAgentic Commerceとは、人間の意思を受けたAI Agentが、検索から支払いまでを自律的に完了させる新しい商取引の形をさす。

AI Commerceの具体例としては、GoogleのAgentic Checkout、Gemini in Shopping / Lens / Glasses、VisaのIntelligent Commerce、MastercardのAgent Pay、PayPalのPayPal Agent Toolkit、OpenAI(ChatGPT)のProduct Recovery、StripeのAI Foundation Model for Paymentsなどがある。

 

Agentic Commerceを実行するのが AI Agentとなる。AI Agentは、自律性があり、意思決定を行い、実際の行為を人に代わって実行する。情報検索や意思決定の支援を行うAI Assistantよりは格段に能力が向上している。

(AI Assistantでは、AmazonのAlexaや、AppleのSiriなど、または“xxxのCopilot” が市場に多く出回っている。これらのAI Assistantといえども、技術の進化に伴いAI Agentになりつつある。)

 

AI Agentは、従来の「検索→比較→クリック→予約」のUXを不要にし、消費者がChatGPTやGoogle経由で直接予約する、つまり生成AI経由の販路が増加して、OTAを経由しない購買が増加させることになるという。OTAの「存在感」や「比較(検索)機能」は、AIに吸収される可能性が高いというのだ。

OTAは、自社コンテンツ・在庫をAI Agentと連携できるようAPI経由で開放したり、自ら自社専用のAI Agentを開発したり、直接予約を維持することを考えている。そのほか、AI Agentでも探せない特別オファーや独自商品の提供(例:パッケージ、ローカル体験)に注力している。特別オファーには、ロイヤルティプログラムは当然のこと、Bookingの “コネクテッド・トリップ” も含まれるのだろう。

 

 

そのほか、「1. 未来への飛行:IATA事務総長「テック第一思考」要求、年次総会で」で、事務総長Willie Walshが、デジタル化・データ活用・持続可能性重視」の未来へ進まなければ取り残されると警鐘を鳴らした。年5億人以上の乗客と9.790億ドルの収益を支える航空業界にとって、飛行機や乗客以上に重要なのは、テクノロジーをいかに賢く活用するかだと訴えた。

 

先週の「22. NDC、動的価格、オファー、オーダーによる(まだ実現されていない)顧客の利点」の、航空会社の自分自身のテクノロジー開発遅れの問題については、(この記事を読む限りでは、)なぜか一言も触れられていない。

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6月9日

1. 未来への飛行:IATA事務総長「テック第一思考」要求、年次総会で

2. 旅行者は生成AIによる旅行発見準備できている、世界調査          閲覧数第6位

3. 短いインタビュー:Wakanow の Adebayo Adedeji

4. 旅行業界、エージェンティック・コマース準備整っているか         閲覧数第1位

6月10日

5. 将来はハイブリッド:STRの滞在期間の課題への対応

6. 世代別支出パターン、旅行ブランドの戦略的洞察を明らかにする

7. 2025年トラベルテックのトップ投資家たち                閲覧数第2位

6月11日

8. 旅行 eSIM プロバイダ Kolet、シリーズAで1,000万ドル調達

9. 2025 Global Startup Pitch の勝者たち

10. Speakspots、ホワイトレーベル AI エージェント立ち上げ

11. TourRader、写真とリールから予約できる Moments 立ち上げ

12. AI、バケーションレンタル業界 静かに構造改革              閲覧数第4位

6月12日

目次

13. バージンオーストラリア航空、ホテル予約で HTS Stays 提携

14. Apaleo、Phocuswright Europe 2025 で中東地区イノベーション賞受賞

15. CRMプラットフォームTern、トラベルアドバイザーLucia 買収

16. Tripadvisor 幹部、AI戦略・ブランド信頼・メンバーシップ 語る      閲覧数第3位

6月13日

17. PhocusWire Daily、週間トラベルテック記事のまとめ

18. Canary Technologies、AI拡張に8,000万ドル調達

19. FareHarbor創業者、Rezdy-Checkfront-Regiondo率いる

20. 旅行分野の体験を分解する​                       閲覧数第5位

​2025年 6月第1週の編集人コメント

今週号では、16. Airbnbの「Services」、ホストにとって不公平なのか? と「22. NDC、動的価格、オファー、オーダーによる(まだ実現されていない)顧客の利点」が面白い。

16. Airbnbの「Services」、ホストにとって不公平なのか?

Airbnbが開始した「Services」は、ゲスト向けにマッサージやシェフなどの追加サービスを提供する新機能だが、ホストには収益が還元されず、リスクと負担だけが増えると批判されている。しかも、サービスはデフォルトで自動適用(オプトアウト方式)されており、ホストの同意がないまま自宅で商業活動が行われる可能性もある。業界関係者は、収益分配、ホストの関与、任意参加の仕組み(オプトイン方式)を求めている。

この問題の根本には、商品開発のプロセスにホストや地域が関与していないことがある。最初から、地元DMOやホストを巻き込んだ商品造成チームの設置が必要だったのではないだろうか。

近年では、「目的地でのTours & Activities(T&A)」が旅行の主軸となりつつある。この記事は、先月のPhocusWire Dailyに掲載された「旅行者はますますパーソナルなT&Aを求めているのに、旅行会社は宿泊や移動手段に偏っている」という指摘を想起させる。

旅の醍醐味は、目的地での体験にある。であれば、中心がホストの家で提供される付帯サービスである必要はない。むしろ、地域全体をフィールドとした広範囲でオーセンティックなT&A商品の開発こそが求められる。

民泊のパイオニアであるAirbnbが、ホテルの付帯サービスを真似るような形で終わってしまうのは残念である。本来あるべき姿に立ち戻り、地域の魅力を活かした競争力あるダイナミックな体験型商品を構築してほしいものだ。

 

22. NDC、動的価格、オファー、オーダーによる(まだ実現されていない)顧客の利点

航空業界が推進するNDCやダイナミックプライシングは、「パーソナライズされた柔軟な旅行体験の実現」を目指して導入が進められてきた。しかし、巨額の投資にもかかわらず、顧客にとっての明確なメリットはほとんど実現されていない。業界がNDCの可能性を真に実現するには、標準化、透明性、顧客中心の設計が不可欠である。さもなければ、NDCは空論に終わり、顧客の信頼を失う危険があると言っている。

 

NDCは、2012年にIATAによって、その仕様が初めて公開された。13年もかかっても、普及率や完成度は部分的にとどまっている。オファーとオーダーを本格的に稼働させるには、さらに少なくとも5年以上はかかるらしい。

こんなテンポでは、加速度的に進化しているAIへの対応ができないのではないだろうか? AIの進化によって、NDC構想自体がレガシーシステムとなって、新たな技術的負債を作りかねない。

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6月2日

1. Speaker Alert: Richard Valtr of Mews

2. 英国トラベルマーケット、モバイル加速がインフラシフト

3. Acai Travel、Amadeus Ventures が資金提供

4. 欧州で Booking.com 団体訴訟                      閲覧数第2位

6月3日

5. 短いインタビュー:Digitrips の Emile Dumont

6. 旅行 eSIM 会社 Truly、200万ドル調達

7. OTA、第一四半期マーケティング支出増加                 閲覧数第3位

6月4日

8. Speaker Alert: Esther Villena of Amadeus

9. コンセプトからカーブサイドまで:ZOOXとリゾートの世界ホスピタリティ主導の自律的モビリティ

10. Agoda、インド旅行者にAI 駆動トラベルプランナー

11. Juniper Travel Technology、イベント管理 RezMagic 買収

12. Cloudbeds CEO、組織全体でAIを実験                 閲覧数第1位

6月5日

13. Hotel Communication Network、Crave Interactive 買収

14. 短いインタビュー:Expedia Group の Karen Bolda

15. Holidu、仏レンタル Cybevasion 買収                  閲覧数第6位

16. Airbnbの「Services」、ホストにとって不公平なのか?          閲覧数第4位

6月6日

17. Speaker Alert: Nick Price of Netsys Technology

18. PhocusWire の今週のトラベルテック記事のまとめ

19. 新興企業の舞台:Tukio、アフリカサファリ予約とプラニング容易化望む

20. Iberia、ChatGPT で会話アシスタント開始

21. Nezasa、AWAI のテック獲得し動的価格提供

22. NDC、動的価格、オファー、オーダーによる(まだ実現されていない)顧客の利点   閲覧数第5位

2025年5月第5週の編集人コメント

10. 短いインタビュー:Expedia GroupのShilpa Ranganathan」で、Expedia Groupの最高製品責任者の次の発言が印象に残った。

  • お客様が全体的に素晴らしい旅行を行えるようにすることは複雑な問題であり、エコシステムと旅行業界での深いパートナーシップが必要です。旅行の旅の複数の工程にわたって旅行体験全体を提供することは困難な場合がありますが、私にとっては、世界中のサプライヤー、パートナー、広告主と深く連携し、旅行者が夢を実現するための共同ソリューションを構築するプラットフォームとして最大の機会です。

  • AIを含む新興技術は、旅行体験を変え、今から5年後、AIベースの信頼できるコンパニオンが旅行体験のすべての困難に対処し、私たち全員が旅行を楽しみ、素晴らしい思い出を作ることを可能にします。

  • 旅行業界でイノベーションが起こりうる最も興味深い場所は、物事が計画通りに進行わないときです。

  • お客様にとって最も困難な問題を最も喜ばれる方法で解決します。

  • 最高の仕事ができるチーム文化を築く。(「今年の優先事項は何ですか?」の問いに対しての発言)

 

先週紹介した記事「20. 将来の旅行AIエージェントの4つのシナリオ」では、OTA(オンライン旅行代理店)中心の視点からAIエージェントの未来を描いていた。しかし今週の「17. AIトラベルシナリオが3兆ドルのチャンスを逃す理由?」は、それに異議を唱える。旅行者が実際に旅の計画を始める場所——コミュニティやSNS——が見落とされているというのだ。

事実、旅行者の89%がSNSを通じて旅先を発見しており、OTAは「予約の場」に過ぎない。旅の始点ではなく、確認と決済の場だという主張である。

さらにこの記事は、複雑な旅程を計画するには、現在のOTAのシステムや汎用LLM(大規模言語モデル)では対応できないと指摘する。真のイノベーションは、「会話ベースの旅の夢(例:秋にパートナーと静かなヨーロッパ旅行をしたい)」をAIが読み取り、それを構造化し、実行可能な旅程に分解・再構成できる能力にある。

この課題を技術的に解決できれば、旅程そのものが高付加価値な“商品”となり、B2Bマーケットプレイスを通じて旅行会社やOTAに販売可能になる。つまりAIによる旅行業界の真の変革とは、OTAを直接的に置き換えることではなく、旅のインスピレーション段階で介入し、新たな仲介価値を生み出すことにあるという視点である。

この記事は、「OTAのディスインターミディエーション(disintermediation)=中抜きは、すぐには起こらない」とも強調している。“すぐには”という但し書きを読み落としてはならない。

とはいえ、もしAIエージェントがパーソナルでコネクテッドな旅程を構築できるようになり、その上で自ら関連する全ての予約(=トランザクション)を実行できるようになれば、OTAは中抜きされる可能性があるというのが論理的帰結となる。

本記事が「すぐには中抜きされない」とする理由は次の通り:

  • OTAは数十万のホテル、航空会社、ツアー在庫を一元管理し、価格比較・キャンセル対応・カスタマーサポートまで提供している。

  • それを支えるオペレーションとインフラは非常に複雑かつ膨大で、容易には代替できない。

つまり、OTAは当面は“中抜きされない”が、将来的には「在庫提供者」として間接的に関与するB2B的な存在に後退する可能性がある。AIエージェントに在庫や決済APIを提供する**「AIエージェント向けのサプライヤー」**になる、というのが本記事の示唆する結論だ。

主導権は、もはやUIと旅程設計を担うAIエージェント側に移行しつつある。言い換えれば、「AIエージェント主導の旅行エコシステム」が現実味を帯びてきたということであり、旅行者と業界の接点そのものが再定義されつつある。

OTAが完全に消えるとは限らない。しかし、「消費者の旅の起点」という地位から、「裏方の在庫供給者」へと押しやられる可能性が高いという認識を持つ必要がある。

「すぐには」とは、どのくらいの時間軸を想定したら良のだろうか。前出の「10.」の記事は、今から5年後と言っている。

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5月26日

「メモリアルデー(戦没将兵追悼記念日)」祝日のため休刊

5月27日

1. 短いインタビュ:OAG の Filip Filipov

2. 2025年カナダの旅行代理店の成長を牽引するものは何か?

3. Booking.com、多くのコンテンツクリエーター契約停止

4. 注目CEO:Flyr の Alex Mans                       閲覧数第2位

5月28日

5. Speaker Alert: Matt Goldberg of Tripadvisor

6. 投資家用の新産業インテリジェンスのプレイブック

7. スイス規制当局、Hotelplan グループの Dertour 買収再検討

8. Accelya、FLX AIViator 立ち上げ

9. ポイントを超えて移動:ホテルロイヤルティプログラムの状態         閲覧数第1位

5月29日

10. 短いインタビュー:Expedia Group の Shilpa Ranganathan

11. 豪華STRプラットフォーム Wander が5,000万ドル調達

12. Hopper、Lloyd に旅行予約ポータル                    閲覧数第5位

13. 生成AIの旅行流通への影響                        閲覧数第3位

5月30日

14. Speaker Alert: Rajnish Kumar of Ixigo

15. 新興企業の舞台:TripPromotor、AIでクリエーター旅行コンテンツ予約

16. 今週のPhocusWireトラベルテック記事のまとめ

17. AI トラベルシナリオが3兆ドルのチャンスを逃す理由?           閲覧数第4位

2025年5月第4週の編集人コメント

 

「20. 将来の旅行AIエージェントの4つのシナリオ」と「26. Google I/O 2025による旅行への影響」が必読だ。

 

「20. 将来の旅行AIエージェントの4つのシナリオ」

OTAのKiwi.comのVPが、AIエージェントの進化が急速に進む中、旅行業界の未来には4つのシナリオがあると指摘する。4つとは以下の通りである。

シナリオ1:Augmented booking experience(低信頼、低仲介)

シナリオ2:The AI travel concierge(高信頼、低仲介解除)

シナリオ3:Direct AI distribution channels(低信頼、高仲介解除)

シナリオ4:The neural travel marketplace(高信頼、高仲介解除)

そして、「業界は今、柔軟なデータ基盤とAI統合戦略を構築し、どの未来にも対応できる体制を整えるべき時期にある」と言っている。

 

どのシナリオが最も可能性があるのかは、明確には書いていない。しかしよく読んでみると、どうやら現時点ではシナリオ1になるようだ。

その理由は、以下の3つが考えられる。

(1)現行のOTA構造を維持したままの延長線上にあるため、業界の抵抗が少ない。

(2)既に多くのOTA(Expedia、Booking、Hotels.comなど)がAIを活用してレコメンド精度向上や検索補助を行っている。

(3)ユーザーがAIに完全な意思決定を委ねることにまだ抵抗感がある(=「低信頼」)ため、「選択肢の提示+最終判断は人間」という形は当面受け入れやすい。

 

OTAの幹部が書いている記事なので、多分にOTA擁護のスタンスに偏りがち、すなわち「中抜き(disintermediation)」無しの方向に向いているのだろうか。

当面(2025~2027年)は、シナリオ1(AIによる部分的支援)が主流になると予想される一方、将来に向けてはシナリオ2と4に向けた布石を打つことが、旅行業界全体にとって重要となるということではないだろうか。

AIによる旅行流通の本質的変化を勘案すると、自分はシナリオ4が、かなり早い段階で実現すると思う。次の「26. Google I/O 2025による旅行への影響」を読むと、なおさらそう感じてしまう。

 

「26. Google I/O 2025による旅行への影響」

Google I/O 2025で発表された新機能により、検索は「10件のリンク」から「AIによる1つの回答」へと大きく変化しつつあるという。Google Geminiを中心に、AI Mode、Deep Search、エージェント機能(Project Mariner)が強化され、旅行の計画から予約までをGoogle内で完結できるようになる。

Google I/O 2025 における旅行関連機能の一覧は、次のとおりとなる。

(1). AI Mode  検索エンジン

(2). Deep Search  パーソナライズされた旅行提案

(3). Project Mariner   インスピレーションから予約まで」を自動化

(4). Google Travel / Google Things to Do の統合表示   サイト遷移が不要

(5). Agent Checkout  商品価格監視(今後 旅行にも応用予定)

(6). Gemini Live(カメラ連携AI) ガイドが不要に

(7). リアルタイム音声翻訳(Google Meet) 同時通訳機能

(8). Android XR対応スマートグラス  現地体験をAR/AIで強化

(9). Veo 3 / Imagen 4 AIコンテンツ生成

 

これは旅行業界にとって、OTAやブログを介さない「中抜き型」直販の新時代到来を意味していないか。「中抜き」に加えて、これでコネクテッドトラベルの完璧旅行までできてしまうようだ。

 

日経新聞 5月23日朝刊「〈ビジネスTODAY〉スマホの次は『脱画面』 オープンAI、端末開発へ米社買収 音声操作に商機」は、

「OpenAIは元Apple幹部ジョニー・アイブと協力し、『画面のないAI端末』開発に乗り出す。音声操作を主軸に、スマホに代わる次世代デバイスを2026年に公開予定。スマホ依存からの脱却を目指し、AIとハードの統合で新たなプラットフォームを築こうとしている。スマホとの共存が当面続く一方、供給網や産業構造に変化をもたらす可能性がある」と伝える。

 

日経新聞5月23日朝刊「グーグルCEO『サブスクの重要性増す』先端技術の開発負担重く」は、

「GoogleのピチャイCEOは、AI開発にかかる巨額コストを背景に、サブスクリプションの重要性が今後ますます高まると強調した。新たに月250ドルの『Google AI Ultra』などを導入し、無料広告モデルから有料課金モデルへのシフトを加速。AIや量子コンピューターなど長期投資領域の持続のために、収益多様化が不可欠との見解を示した。独占批判には、技術は広く開放していると反論している」と伝えている。

 

この日経記事2つを読むと、ますますシナリオ4に傾いてしまう。

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5月19日

1. Speaker Alert: Alix Boulnois of Accor

2. 新興企業の舞台:VanityPass、若年旅行者ロイヤリティ報酬再設計目指す

3. 体験がホテルRevPARを 55%増加できる

4. バケーションレンタルのアンシラリーが新フロンティア?        閲覧数第4位

5月20日

5. インタビュー:Dida の Gareth Matthews

6. Expedia Group 元CFO Erick Hart が復帰、戦略と事業開発を担務    閲覧数第6位

7. Trip.com Group 第1四半期、増収と倍増インバウンド予約

8. 旅行サイバーセキュリティ持続、なぜ悪化する             閲覧数第3位

5月21日

9. Speaker Alert: Karen Bolda of Expedia Group

10. WiT Queenstown、2026年にデビュー

11. アパートのネットワーク Landing、1.8億ドル調達

12. Amadeus、インテリジェンス会社 ForwardKeys 買収

13. Ariane Gorin、Expedia Group CEO 1年を振り返る         閲覧数第1位

5月22日

14. Fly Fairly、旅行発見エンジン LFG 買収

18. トラベルマネージャー28%、TMC 変更考慮

19. 短いインタビュー、Amadeus の Nicolas Martiquet

20. 将来の旅行AIエージェントの4つのシナリオ             閲覧数第2位

5月23日

21. Speaker Alert: Bjorn Bender of Rail Europe

22. PhocusWire Daily、今週のトラベルテック記事のまとめ

23. Travaras、シード前資金調達で154万ドル

24. Hotel ID イニシャティブ、業界コミュニケーション簡素化 開始

25. スイス規制当局、Booking.com コミッション 25%カット命令

26. Google I/O 2025 による旅行への影響               閲覧数第5位

2025年5月第3週の編集人コメント

 

今週では、ホテルのリテーリング(7.の記事)、Airbnbの新プロダクトであるServices(12.の記事)、そしてExpedia GroupのAI活用(15.の記事)に注目したい。

 

「7. テクノロジー、客室収入を超えてホテルを支援しているか?

ホテル業界は、従来の「1部屋あたり収益(RevPAR)」から「1ゲストあたり収益(RevPAG)」へと注目が移っている。これは、客室だけでなく、ホテルが提供する全てのサービスや体験から収益を最大化しようという狙いだ。消費者の行動が変化し、部屋代の支出が減少する一方で、付加サービスやアンシラリープロダクトへの支出が増えていることが背景にある。AIや新しい技術を活用することで、需要を喚起し、収益を向上させることが可能になる。RevPAGは、全てのホテルに適用できるが、その方法はホテルのタイプに応じて異なる。高級ホテルでは、ゲストの好みや消費行動に基づいてパーソナライズされた体験を提供することが重要だ。

この話は、以前のニュースにも登場していたRevPAMに相通ずる話だ。RevPAMとはRevenue per available meterの略で、ホテル施設の1平米あたりの収益最大を目指す指標である。ホテル業界も、航空業界も、皆「小売」の戦略を強化している。というよりは、Amazonなどのオンラインのリテーリングに一生懸命追いつこうとしている。

 

12. Airbnb、ケータリング・マッサージ・パーソナルトレーニングなど新サービス

Airbnbは、2025年夏の発表で「Experiences」の再リリースと新しい「Services」カテゴリー、そして新しいモバイルアプリを発表した。これにより、宿泊施設だけでなく、旅行者向けの多様なサービスを提供し、全体的な旅行体験を向上させることを目指している。新しいアプリは、宿泊、サービス、エクスペリエンスの予約を一元化し、旅行中のあらゆるニーズに対応できるように設計されている。業界からは賛否両論があり、特にサービス部門はスケーリングが容易で、年間を通じてアプリの利用者を引き付けることが期待されている。

AirbnbのServicesは、民泊とは異なるサービス提供で、シェフ、マッサージ師、ヘアスタイリスト、トレーナーなどが提供する追加的なサービスを利用者が選べるようになっている。語弊があるが、何だか「便利屋」みたいな位置付けなのだろうか。日経新聞16日朝刊17面は「エアビー『スキルシェア』仲介」と伝える。誰でもサービスを販売できる(便利屋のための)オープンプラットフォームのようなものなのだろうか。

Airbnbは、事業の多角化に舵を切っているようだ。ところで、ホームに加えて航空チケット販売も取り込んだ「総合旅行社」構想はどうなっているのだろうか?

Airbnbのコネクテッドトリップに基づけば、当然、航空も取り込むことなる。航空チケットの取り扱いが実現すれば、他のOTAや旅行会社に対抗するための大きなステップとなり、より一層の多角化が進む可能性がある。

つまり、Airbnbの方向性は、宿泊業(短期レンタル)の枠を超え、旅行全体をカバーするプラットフォームへと進化している途中であり、航空チケット販売の取り込みもその一環として考えられるのかもしれない。

また、新しいモバイルアプリについて、Airbnbは「everything app」とも呼んでいる。であれば、「スーパーアプリ」と同じもののように聞こえる。しかし、よく読んでみると、このアプリは、Airbnbの多機能(ホーム + Experiences + Services)を統合したものであり、あくまで旅行関連の体験や宿泊、サービスに特化しているのだから、日常のサービスを網羅するスーパーアプリとは異なるものだ。

 

「15. Expedia Group、B2B 部門強化して新API と広告機能追加

ExpediaがAIを活用して、増収と競争力を強化している。特に、B2Bパートナーとの連携強化や、AIを通じてより効果的な旅行の発見と予約体験を旅行者に提供し、この会社が強いいB2Bの世界では提携企業の関係(増収支援)を強化することで、旅行業界でのシェアを拡大しようとしている。

AIを活用して直接的なトラフィックやパートナーシップを強化することで、Googleに支払うマーケティングコストを減少させる一助としたいのだろう。ただし、完全に依存を無くすのは難しく、Googleの広告システムは依然として重要な集客手段であるため、削減効果には限度があるかもしれない。

「20. AIによるリアルタイムのアベイラビリティと価格はホスピタリティ流通を変える:準備はできているか?」は、Google Hotels Ads広告はすでにGemini(Googleの「マルチモーダルAI、以前のBard)に表示されており、Googleが有利であることを示していると言っている。

▪️

5月12日

1. Speaker Alert: Marnie Wilking of Booking.com

2. 97% STRホスト、成功にはテック不可欠と語る

3. 断片化、規制、加速:新しい短期レンタルのプレイブック

4. 投資家が旅行スタートアップについて間違っていること       閲覧数第4位

5月13日

5. 短いインタビュー: Chain4Travel の Pablo Castillo

6. Wonderful Copenhagen、持続可能報酬プログラム復活

7. テクノロジー、客室収入を超えてホテルを支援しているか?     閲覧数第3位

5月14日

8. Speaker Alert: Greg O’Hara of Certares

9. Game On:Phocuswright Conference 2025

10. Skyscanner、新CEOを任命

11. MakeMyTrip、2024年度最高取扱高と収入            閲覧数第5位

12. Airbnb、ケータリング・マッサージ・パーソナルトレーニングなど新サービス追加     閲覧数第1位

5月15日

13. 短いインタビュー:Omio の Veronica Diquattro

14. HBX Group、ホテル電子的運営支援で Civitfun 買収

15. Expedia Group、B2B 部門強化して新API と広告機能追加     閲覧数第2位

5月16日

16. Tern、1,300万ドル調達して新機能立ち上げ

17. PhocusWireの今週のトラベルテック記事のまとめ

18. 2025 Global Startup Pitch 、19候補が最終決戦へ

19. ProsusのDespegar買収完了

20. AIによるリアルタイムのアベイラビリティと価格はホスピタリティ流通変える:準備はできているか?  閲覧数第6位

2025年 5月第2週 の編集人コメント

 

「21. 旅行業界がGoogle広告に引っ掛けられている理由(そしてそれについて何をすべきか)」は;

毎年、世界中で約2,370億ドル(約35兆円)がGoogle Adsに費やされ、Googleの収益の75%以上を占めている。多くの旅行会社はGoogle Adsに依存しており、その結果、Googleを介して顧客を引き寄せることがビジネスの成否に直結している。特に、検索エンジンの結果で上位に表示されるためには、Google Adsに投資することが唯一の方法になっている。しかし、これに依存し続けることはリスクが大きく、広告費の増大に繋がる、と指摘する。

 

ところが、AIの進展により、Googleの広告モデルに変化が訪れる可能性があるという。特に、AIを活用した新たな広告機会が登場することで、旅行業界にとっては安価な広告クリックの機会が生まれるかもしれないというのだ。

 

日経新聞 5月11日「グーグル、揺らぐネット支配  iPhoneの検索減/シェア90%割る 対話型AIへ代替進む」は、Googleはネット検索の支配的地位が揺らいでおり、特にiPhoneでの検索シェアが減少している。AppleがGoogleの検索エンジン以外のAI検索も追加する方針を発表し、これによりGoogleの広告モデルが脅かされている。従来のキーワード検索が対話型AI(例:ChatGPT)に取って代わられる可能性が高まっており、Gartnerは2026年には検索の25%がAIに置き換わると予測している。

Googleは自社で「Gemini」を開発して対話型AIに対応しているが、開発スピードや導入実績でオープンAIに後れを取っている。また、広告閲覧数が減少する可能性があり、その影響で収益の大部分を占める広告ビジネスが危機に直面している。これにより、Googleは「革新から守る側」に回ったとも言われ、25年間の支配的地位が変化しつつある。

 

Googleは、Geminiを検索エンジンや広告、Workspaceなどの各サービスに統合し、ユーザー体験の向上を図っている。これにより、従来の検索エンジンに代わる新たな情報取得手段としての地位を確立しつつある。AI技術を活用した新たな広告体験についても提供するだろう。今後、Geminiの進化とともに、Googleの広告戦略がどのように展開されるかが注目される。

 

「21. Expedia、米インバウンド低下にピンチ、カナダからの予約30%減少」が;

第1四半期の収益は299億ドルで、前年同期比で3%増加した。B2Cの収益は前年比2%減少して約19億6,000万ドルとなり、B2Bの収益は9億4,700万ドルに達し、前年同期比で14%増加した、と伝える。

第1四半期の純損失は2億ドルで、2024年の同時期の1億3,500万ドルから49%増加し、調整後EBITDAは16%増の2億9,600万ドルとなった。

 

業績が悪くないにも関わらずCEO Ariane Gorinが「feel a pinch」と言ったのは、アメリカ国内の旅行需要が鈍化し、特にカナダからの予約が大幅に減少するなどの影響を受けたため、一定の困難を感じているということなのだろう。

 

Expedia Group以外の1Q決算は、大なり小なり皆好決算を計上している。

14. Uber、第1四半期増収 自立運転自動車提携強化

総取扱高が14%増加し、約430億ドルになった。収益は14%増加し、約120億ドルになった。同社は、月間アクティブプラットフォーム消費者の14%の増加に起因して、旅行が前年比で18%増加し、30億件に達したと述べている。純利益は18億ドルで、調整後EBITDAは35%増の19億ドルであった。

「11. Sabre、航空予約低下とIT移行で第1四半期減収」

収益が1%減少し、7億7,700万ドルになった。営業利益は1億300万ドルで、前年比1%ポイント上昇し、純利益は3,500万ドルと報告した。第1四半期の調整後EBITDAは前年比5%増の1億5,000万ドルとなった。

「12. Tripadvisor:AI で旅行意図の強いトラフィックを照準」

Tripadvisor Groupは、2025年第1四半期の収益が3億9,800万ドルで、前年同期比で1%増加したと報告した。決算は予想を約1,000万ドル上回った。

同社は、第1四半期の調整後EBITDAは4,400万ドルで、総収益の11%を占め、第1四半期の純損失は1,100万ドルであると報告した。Non-GAAPの収入は2,100万ドルであった。

「15. Amadeus、世界的不安定の中で、第1四半期増益」

Amadeusは、2025年第1四半期の決算報告で、2025年に向けて「十分に準備されている」と述べた。同社のグループ収益は9%増の16億ユーロ、営業利益は前年比10%増の4億6,200万ユーロとなった。利益は前年比13%増の3億5,500万ユーロとなり、調整後EBITDAは8%増の6億2,800万ユーロとなった。

 

「トランプ関税」の関係で、2025年の旅行需要は、(きっと)悪い影響を受けるのではないだろうか。

 

「9. 航空会社、増収のためにオファー、オーダー、決済、配送をどのように活用するか?」は;

IATAの新流通能力(NDC)基準は、航空会社の販売方法を現代化するために2012年に導入された。IATAは、座席の販売ではなく、市場条件や購買パターンに応じて動的に生成される商品オファーが提供されることを目指しており、従来の運賃クラスや運賃の提出が廃止され、チケット、予約記録、追加料金が一つの記録に統合される。しかし、オファーとオーダーだけでは不十分で、決済とサービス提供の重要性も強調されているという。

航空会社は、Amazonのように「エンドツーエンド」の体験を提供し、すべてのオーダーを追跡できる能力を持つべきだとされている。Amadeusは、OOSD(オファー、オーダー、決済 Settle、提供 Delivery )を採用し、これにより旅行者体験を改善し、空港での文書確認をデジタル化する可能性があると述べている。

また、NDC導入は航空業界の経済状況や投資状況に依存しており、導入には時間がかかると予測されている。航空会社は、OOSDが収益向上につながると考えており、良い小売体験が繰り返しの購入につながると信じている。

 

A 地点から B 地点 までの航空機を利用した安全な旅行を提供するのが、小売よりも何よりも航空会社の絶対的使命だ。旅行者も、安全で定時にB地点まで行ければ、そして安ければ、ミニマムな要件は満たされる。ほとんどの航空会社が、同じ航空機を使って、ほとんど同じサービスをしている中で、差別化は根本的に難しいのが航空旅客輸送の商品だと考えてしまう。差別化と言ったって、そもそも航空会社の競争はそんなに激しくない。IATA加盟航空会社も300数十社だ。その中で、航空旅客輸送におけるパーソナリゼーションなんて本当に必要なのだろうか? 旅行者もそんなことを本気で求めていないのではないのか?

 

こんな疑問をIATAに質問すれば、きっと「差別化が難しいからこそ、OOSDが必要なのだ」と言われてしまいそうだ。

NDCは、ここまで来るのに10数年もかかっている。このペースだけは改善する必要がありそうだ。

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5月5日  

1. Speaker alert: Pepijn Rijvers of Viator

2. 北米航空会社、サイバーセキュリティとAI投資に注力

3. 新興企業の舞台:GuestOS、AI 駆動コンシェルジュ開発

4. 汚いデータから奇跡の実行まで - AIへのホテルのアプローチ​     閲覧数第1位

5月6日

5. 旅行者パターン変更と顧客ニーズ変化、旅行保険需要を促進

6. Vitruvian Partners、マルチモーダルツアー Great Rail Journeys 買収

7. 短いインタビュー:Zamna の Irra Ariella Khi

8. Sky Leasing、JetBlue Ventures買収

9. 航空会社、増収のためにオファー、オーダー、決済、配送をどのように活用するか?  閲覧数第5位

5月7日

10. スペイン2025:需要最高記録で新たな競争

11. Sabre、航空予約低下とIT移行で第1四半期減収          閲覧数第4位

12. Tripadvisor:AI で旅行意図の強いトラフィックを照準        閲覧数第2位

5月8日

13. 短いインタビュー:HomeToGoのBodo Thielmann

14. Uber、第1四半期増収 自律運転自動車提携強化

15. Amadeus、世界的不安定の中で、第1四半期増益

16. 注目CEO:GetYourGuide の Johannes Reck          閲覧数第3位

5月9日

17. レポート − シームレス決済:旅行体験 最初から最後まで高める

18. PhocusWire週間トラベルテック関連記事のまとめ

19. Speaker Alert: Adebayo Adedeji of Wakanow

20. NextTrip、300万ドルのクレジットライン確保

21. 旅行業界がGoogle Adsに引っ掛けられている理由(そしてそれについて何をすべきか)

22. Expedia、米インバウンド低下に愕然、米加予約1Qに30%減少   閲覧数第6位

新着情報
 業界研究 世界の旅行産業 
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「世界の旅行流通 2024年」 
5/27 発売

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​2025年 6月第2週の編集人コメント​

Phocuswright Europe Conferenceが、6月10日~13日、バルセロナで開催された。今週の記事の多くが、この会議の模様を伝える。もちろんトラベルテックのAIが、この会議の主題となっている。(今週の記事で「AI」は227回引用されてる。記事数は20なので、1記事に平均約13回「AI」が使われている。

 

今週の閲覧者数最大の記事「4. 旅行業界、エージェンティック・コマース準備整っているか」もAI関連だ。これが、次のようなことを言っている。

 

旅行業界に「Agentic Commerce(AIが自動で購入を行う仕組み)」の波が迫っている。Visa、Mastercard、PayPal、Googleなどが相次いで対応技術を発表。旅行予約でもAI Agentが人に代わって決済・予約を行う時代が近づいている。

業界はまだ準備不足だが、SabreやStripeなどが支払いインフラを整備中。今後は新たな予約チャネルが爆発的に増えると予測されている。

課題は信頼性とセキュリティ。消費者の信用を得るには、AIに明確な権限設定と支払い情報の管理が必要。とはいえ、中小企業も恩恵を受けられる可能性があり、旅行業界全体に大きな影響を与えると期待されている。

 

Agentic Commerceとは、AIが人間の代わりに自律的に商取引を行う仕組みを指す。旅行分野におけるAgentic Commerceとは、人間の意思を受けたAI Agentが、検索から支払いまでを自律的に完了させる新しい商取引の形をさす。

AI Commerceの具体例としては、GoogleのAgentic Checkout、Gemini in Shopping / Lens / Glasses、VisaのIntelligent Commerce、MastercardのAgent Pay、PayPalのPayPal Agent Toolkit、OpenAI(ChatGPT)のProduct Recovery、StripeのAI Foundation Model for Paymentsなどがある。

 

Agentic Commerceを実行するのが AI Agentとなる。AI Agentは、自律性があり、意思決定を行い、実際の行為を人に代わって実行する。情報検索や意思決定の支援を行うAI Assistantよりは格段に能力が向上している。

(AI Assistantでは、AmazonのAlexaや、AppleのSiriなど、または“xxxのCopilot” が市場に多く出回っている。これらのAI Assistantといえども、技術の進化に伴いAI Agentになりつつある。)

 

AI Agentは、従来の「検索→比較→クリック→予約」のUXを不要にし、消費者がChatGPTやGoogle経由で直接予約する、つまり生成AI経由の販路が増加して、OTAを経由しない購買が増加させることになるという。OTAの「存在感」や「比較(検索)機能」は、AIに吸収される可能性が高いというのだ。

OTAは、自社コンテンツ・在庫をAI Agentと連携できるようAPI経由で開放したり、自ら自社専用のAI Agentを開発したり、直接予約を維持することを考えている。そのほか、AI Agentでも探せない特別オファーや独自商品の提供(例:パッケージ、ローカル体験)に注力している。特別オファーには、ロイヤルティプログラムは当然のこと、Bookingの “コネクテッド・トリップ” も含まれるのだろう。

 

 

そのほか、「1. 未来への飛行:IATA事務総長「テック第一思考」要求、年次総会で」で、事務総長Willie Walshが、デジタル化・データ活用・持続可能性重視」の未来へ進まなければ取り残されると警鐘を鳴らした。年5億人以上の乗客と9.790億ドルの収益を支える航空業界にとって、飛行機や乗客以上に重要なのは、テクノロジーをいかに賢く活用するかだと訴えた。

 

先週の「22. NDC、動的価格、オファー、オーダーによる(まだ実現されていない)顧客の利点」の、航空会社の自分自身のテクノロジー開発遅れの問題については、(この記事を読む限りでは、)なぜか一言も触れられていない。

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6月9日

1. 未来への飛行:IATA事務総長「テック第一思考」要求、年次総会で

2. 旅行者は生成AIによる旅行発見準備できている、世界調査          閲覧数第6位

3. 短いインタビュー:Wakanow の Adebayo Adedeji

4. 旅行業界、エージェンティック・コマース準備整っているか         閲覧数第1位

6月10日

5. 将来はハイブリッド:STRの滞在期間の課題への対応

6. 世代別支出パターン、旅行ブランドの戦略的洞察を明らかにする

7. 2025年トラベルテックのトップ投資家たち                閲覧数第2位

6月11日

8. 旅行 eSIM プロバイダ Kolet、シリーズAで1,000万ドル調達

9. 2025 Global Startup Pitch の勝者たち

10. Speakspots、ホワイトレーベル AI エージェント立ち上げ

11. TourRader、写真とリールから予約できる Moments 立ち上げ

12. AI、バケーションレンタル業界 静かに構造改革              閲覧数第4位

6月12日

目次

13. バージンオーストラリア航空、ホテル予約で HTS Stays 提携

14. Apaleo、Phocuswright Europe 2025 で中東地区イノベーション賞受賞

15. CRMプラットフォームTern、トラベルアドバイザーLucia 買収

16. Tripadvisor 幹部、AI戦略・ブランド信頼・メンバーシップ 語る      閲覧数第3位

6月13日

17. PhocusWire Daily、週間トラベルテック記事のまとめ

18. Canary Technologies、AI拡張に8,000万ドル調達

19. FareHarbor創業者、Rezdy-Checkfront-Regiondo率いる

20. 旅行分野の体験を分解する​                       閲覧数第5位

​2025年 6月第1週の編集人コメント

今週号では、16. Airbnbの「Services」、ホストにとって不公平なのか? と「22. NDC、動的価格、オファー、オーダーによる(まだ実現されていない)顧客の利点」が面白い。

16. Airbnbの「Services」、ホストにとって不公平なのか?

Airbnbが開始した「Services」は、ゲスト向けにマッサージやシェフなどの追加サービスを提供する新機能だが、ホストには収益が還元されず、リスクと負担だけが増えると批判されている。しかも、サービスはデフォルトで自動適用(オプトアウト方式)されており、ホストの同意がないまま自宅で商業活動が行われる可能性もある。業界関係者は、収益分配、ホストの関与、任意参加の仕組み(オプトイン方式)を求めている。

この問題の根本には、商品開発のプロセスにホストや地域が関与していないことがある。最初から、地元DMOやホストを巻き込んだ商品造成チームの設置が必要だったのではないだろうか。

近年では、「目的地でのTours & Activities(T&A)」が旅行の主軸となりつつある。この記事は、先月のPhocusWire Dailyに掲載された「旅行者はますますパーソナルなT&Aを求めているのに、旅行会社は宿泊や移動手段に偏っている」という指摘を想起させる。

旅の醍醐味は、目的地での体験にある。であれば、中心がホストの家で提供される付帯サービスである必要はない。むしろ、地域全体をフィールドとした広範囲でオーセンティックなT&A商品の開発こそが求められる。

民泊のパイオニアであるAirbnbが、ホテルの付帯サービスを真似るような形で終わってしまうのは残念である。本来あるべき姿に立ち戻り、地域の魅力を活かした競争力あるダイナミックな体験型商品を構築してほしいものだ。

 

22. NDC、動的価格、オファー、オーダーによる(まだ実現されていない)顧客の利点

航空業界が推進するNDCやダイナミックプライシングは、「パーソナライズされた柔軟な旅行体験の実現」を目指して導入が進められてきた。しかし、巨額の投資にもかかわらず、顧客にとっての明確なメリットはほとんど実現されていない。業界がNDCの可能性を真に実現するには、標準化、透明性、顧客中心の設計が不可欠である。さもなければ、NDCは空論に終わり、顧客の信頼を失う危険があると言っている。

 

NDCは、2012年にIATAによって、その仕様が初めて公開された。13年もかかっても、普及率や完成度は部分的にとどまっている。オファーとオーダーを本格的に稼働させるには、さらに少なくとも5年以上はかかるらしい。

こんなテンポでは、加速度的に進化しているAIへの対応ができないのではないだろうか? AIの進化によって、NDC構想自体がレガシーシステムとなって、新たな技術的負債を作りかねない。

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6月2日

1. Speaker Alert: Richard Valtr of Mews

2. 英国トラベルマーケット、モバイル加速がインフラシフト

3. Acai Travel、Amadeus Ventures が資金提供

4. 欧州で Booking.com 団体訴訟                      閲覧数第2位

6月3日

5. 短いインタビュー:Digitrips の Emile Dumont

6. 旅行 eSIM 会社 Truly、200万ドル調達

7. OTA、第一四半期マーケティング支出増加                 閲覧数第3位

6月4日

8. Speaker Alert: Esther Villena of Amadeus

9. コンセプトからカーブサイドまで:ZOOXとリゾートの世界ホスピタリティ主導の自律的モビリティ

10. Agoda、インド旅行者にAI 駆動トラベルプランナー

11. Juniper Travel Technology、イベント管理 RezMagic 買収

12. Cloudbeds CEO、組織全体でAIを実験                 閲覧数第1位

6月5日

13. Hotel Communication Network、Crave Interactive 買収

14. 短いインタビュー:Expedia Group の Karen Bolda

15. Holidu、仏レンタル Cybevasion 買収                  閲覧数第6位

16. Airbnbの「Services」、ホストにとって不公平なのか?          閲覧数第4位

6月6日

17. Speaker Alert: Nick Price of Netsys Technology

18. PhocusWire の今週のトラベルテック記事のまとめ

19. 新興企業の舞台:Tukio、アフリカサファリ予約とプラニング容易化望む

20. Iberia、ChatGPT で会話アシスタント開始

21. Nezasa、AWAI のテック獲得し動的価格提供

22. NDC、動的価格、オファー、オーダーによる(まだ実現されていない)顧客の利点   閲覧数第5位

2025年5月第5週の編集人コメント

10. 短いインタビュー:Expedia GroupのShilpa Ranganathan」で、Expedia Groupの最高製品責任者の次の発言が印象に残った。

  • お客様が全体的に素晴らしい旅行を行えるようにすることは複雑な問題であり、エコシステムと旅行業界での深いパートナーシップが必要です。旅行の旅の複数の工程にわたって旅行体験全体を提供することは困難な場合がありますが、私にとっては、世界中のサプライヤー、パートナー、広告主と深く連携し、旅行者が夢を実現するための共同ソリューションを構築するプラットフォームとして最大の機会です。

  • AIを含む新興技術は、旅行体験を変え、今から5年後、AIベースの信頼できるコンパニオンが旅行体験のすべての困難に対処し、私たち全員が旅行を楽しみ、素晴らしい思い出を作ることを可能にします。

  • 旅行業界でイノベーションが起こりうる最も興味深い場所は、物事が計画通りに進行わないときです。

  • お客様にとって最も困難な問題を最も喜ばれる方法で解決します。

  • 最高の仕事ができるチーム文化を築く。(「今年の優先事項は何ですか?」の問いに対しての発言)

 

先週紹介した記事「20. 将来の旅行AIエージェントの4つのシナリオ」では、OTA(オンライン旅行代理店)中心の視点からAIエージェントの未来を描いていた。しかし今週の「17. AIトラベルシナリオが3兆ドルのチャンスを逃す理由?」は、それに異議を唱える。旅行者が実際に旅の計画を始める場所——コミュニティやSNS——が見落とされているというのだ。

事実、旅行者の89%がSNSを通じて旅先を発見しており、OTAは「予約の場」に過ぎない。旅の始点ではなく、確認と決済の場だという主張である。

さらにこの記事は、複雑な旅程を計画するには、現在のOTAのシステムや汎用LLM(大規模言語モデル)では対応できないと指摘する。真のイノベーションは、「会話ベースの旅の夢(例:秋にパートナーと静かなヨーロッパ旅行をしたい)」をAIが読み取り、それを構造化し、実行可能な旅程に分解・再構成できる能力にある。

この課題を技術的に解決できれば、旅程そのものが高付加価値な“商品”となり、B2Bマーケットプレイスを通じて旅行会社やOTAに販売可能になる。つまりAIによる旅行業界の真の変革とは、OTAを直接的に置き換えることではなく、旅のインスピレーション段階で介入し、新たな仲介価値を生み出すことにあるという視点である。

この記事は、「OTAのディスインターミディエーション(disintermediation)=中抜きは、すぐには起こらない」とも強調している。“すぐには”という但し書きを読み落としてはならない。

とはいえ、もしAIエージェントがパーソナルでコネクテッドな旅程を構築できるようになり、その上で自ら関連する全ての予約(=トランザクション)を実行できるようになれば、OTAは中抜きされる可能性があるというのが論理的帰結となる。

本記事が「すぐには中抜きされない」とする理由は次の通り:

  • OTAは数十万のホテル、航空会社、ツアー在庫を一元管理し、価格比較・キャンセル対応・カスタマーサポートまで提供している。

  • それを支えるオペレーションとインフラは非常に複雑かつ膨大で、容易には代替できない。

つまり、OTAは当面は“中抜きされない”が、将来的には「在庫提供者」として間接的に関与するB2B的な存在に後退する可能性がある。AIエージェントに在庫や決済APIを提供する**「AIエージェント向けのサプライヤー」**になる、というのが本記事の示唆する結論だ。

主導権は、もはやUIと旅程設計を担うAIエージェント側に移行しつつある。言い換えれば、「AIエージェント主導の旅行エコシステム」が現実味を帯びてきたということであり、旅行者と業界の接点そのものが再定義されつつある。

OTAが完全に消えるとは限らない。しかし、「消費者の旅の起点」という地位から、「裏方の在庫供給者」へと押しやられる可能性が高いという認識を持つ必要がある。

「すぐには」とは、どのくらいの時間軸を想定したら良のだろうか。前出の「10.」の記事は、今から5年後と言っている。

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5月26日

「メモリアルデー(戦没将兵追悼記念日)」祝日のため休刊

5月27日

1. 短いインタビュ:OAG の Filip Filipov

2. 2025年カナダの旅行代理店の成長を牽引するものは何か?

3. Booking.com、多くのコンテンツクリエーター契約停止

4. 注目CEO:Flyr の Alex Mans                       閲覧数第2位

5月28日

5. Speaker Alert: Matt Goldberg of Tripadvisor

6. 投資家用の新産業インテリジェンスのプレイブック

7. スイス規制当局、Hotelplan グループの Dertour 買収再検討

8. Accelya、FLX AIViator 立ち上げ

9. ポイントを超えて移動:ホテルロイヤルティプログラムの状態         閲覧数第1位

5月29日

10. 短いインタビュー:Expedia Group の Shilpa Ranganathan

11. 豪華STRプラットフォーム Wander が5,000万ドル調達

12. Hopper、Lloyd に旅行予約ポータル                    閲覧数第5位

13. 生成AIの旅行流通への影響                        閲覧数第3位

5月30日

14. Speaker Alert: Rajnish Kumar of Ixigo

15. 新興企業の舞台:TripPromotor、AIでクリエーター旅行コンテンツ予約

16. 今週のPhocusWireトラベルテック記事のまとめ

17. AI トラベルシナリオが3兆ドルのチャンスを逃す理由?           閲覧数第4位

2025年5月第4週の編集人コメント

 

「20. 将来の旅行AIエージェントの4つのシナリオ」と「26. Google I/O 2025による旅行への影響」が必読だ。

 

「20. 将来の旅行AIエージェントの4つのシナリオ」

OTAのKiwi.comのVPが、AIエージェントの進化が急速に進む中、旅行業界の未来には4つのシナリオがあると指摘する。4つとは以下の通りである。

シナリオ1:Augmented booking experience(低信頼、低仲介)

シナリオ2:The AI travel concierge(高信頼、低仲介解除)

シナリオ3:Direct AI distribution channels(低信頼、高仲介解除)

シナリオ4:The neural travel marketplace(高信頼、高仲介解除)

そして、「業界は今、柔軟なデータ基盤とAI統合戦略を構築し、どの未来にも対応できる体制を整えるべき時期にある」と言っている。

 

どのシナリオが最も可能性があるのかは、明確には書いていない。しかしよく読んでみると、どうやら現時点ではシナリオ1になるようだ。

その理由は、以下の3つが考えられる。

(1)現行のOTA構造を維持したままの延長線上にあるため、業界の抵抗が少ない。

(2)既に多くのOTA(Expedia、Booking、Hotels.comなど)がAIを活用してレコメンド精度向上や検索補助を行っている。

(3)ユーザーがAIに完全な意思決定を委ねることにまだ抵抗感がある(=「低信頼」)ため、「選択肢の提示+最終判断は人間」という形は当面受け入れやすい。

 

OTAの幹部が書いている記事なので、多分にOTA擁護のスタンスに偏りがち、すなわち「中抜き(disintermediation)」無しの方向に向いているのだろうか。

当面(2025~2027年)は、シナリオ1(AIによる部分的支援)が主流になると予想される一方、将来に向けてはシナリオ2と4に向けた布石を打つことが、旅行業界全体にとって重要となるということではないだろうか。

AIによる旅行流通の本質的変化を勘案すると、自分はシナリオ4が、かなり早い段階で実現すると思う。次の「26. Google I/O 2025による旅行への影響」を読むと、なおさらそう感じてしまう。

 

「26. Google I/O 2025による旅行への影響」

Google I/O 2025で発表された新機能により、検索は「10件のリンク」から「AIによる1つの回答」へと大きく変化しつつあるという。Google Geminiを中心に、AI Mode、Deep Search、エージェント機能(Project Mariner)が強化され、旅行の計画から予約までをGoogle内で完結できるようになる。

Google I/O 2025 における旅行関連機能の一覧は、次のとおりとなる。

(1). AI Mode  検索エンジン

(2). Deep Search  パーソナライズされた旅行提案

(3). Project Mariner   インスピレーションから予約まで」を自動化

(4). Google Travel / Google Things to Do の統合表示   サイト遷移が不要

(5). Agent Checkout  商品価格監視(今後 旅行にも応用予定)

(6). Gemini Live(カメラ連携AI) ガイドが不要に

(7). リアルタイム音声翻訳(Google Meet) 同時通訳機能

(8). Android XR対応スマートグラス  現地体験をAR/AIで強化

(9). Veo 3 / Imagen 4 AIコンテンツ生成

 

これは旅行業界にとって、OTAやブログを介さない「中抜き型」直販の新時代到来を意味していないか。「中抜き」に加えて、これでコネクテッドトラベルの完璧旅行までできてしまうようだ。

 

日経新聞 5月23日朝刊「〈ビジネスTODAY〉スマホの次は『脱画面』 オープンAI、端末開発へ米社買収 音声操作に商機」は、

「OpenAIは元Apple幹部ジョニー・アイブと協力し、『画面のないAI端末』開発に乗り出す。音声操作を主軸に、スマホに代わる次世代デバイスを2026年に公開予定。スマホ依存からの脱却を目指し、AIとハードの統合で新たなプラットフォームを築こうとしている。スマホとの共存が当面続く一方、供給網や産業構造に変化をもたらす可能性がある」と伝える。

 

日経新聞5月23日朝刊「グーグルCEO『サブスクの重要性増す』先端技術の開発負担重く」は、

「GoogleのピチャイCEOは、AI開発にかかる巨額コストを背景に、サブスクリプションの重要性が今後ますます高まると強調した。新たに月250ドルの『Google AI Ultra』などを導入し、無料広告モデルから有料課金モデルへのシフトを加速。AIや量子コンピューターなど長期投資領域の持続のために、収益多様化が不可欠との見解を示した。独占批判には、技術は広く開放していると反論している」と伝えている。

 

この日経記事2つを読むと、ますますシナリオ4に傾いてしまう。

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5月19日

1. Speaker Alert: Alix Boulnois of Accor

2. 新興企業の舞台:VanityPass、若年旅行者ロイヤリティ報酬再設計目指す

3. 体験がホテルRevPARを 55%増加できる

4. バケーションレンタルのアンシラリーが新フロンティア?        閲覧数第4位

5月20日

5. インタビュー:Dida の Gareth Matthews

6. Expedia Group 元CFO Erick Hart が復帰、戦略と事業開発を担務    閲覧数第6位

7. Trip.com Group 第1四半期、増収と倍増インバウンド予約

8. 旅行サイバーセキュリティ持続、なぜ悪化する             閲覧数第3位

5月21日

9. Speaker Alert: Karen Bolda of Expedia Group

10. WiT Queenstown、2026年にデビュー

11. アパートのネットワーク Landing、1.8億ドル調達

12. Amadeus、インテリジェンス会社 ForwardKeys 買収

13. Ariane Gorin、Expedia Group CEO 1年を振り返る         閲覧数第1位

5月22日

14. Fly Fairly、旅行発見エンジン LFG 買収

18. トラベルマネージャー28%、TMC 変更考慮

19. 短いインタビュー、Amadeus の Nicolas Martiquet

20. 将来の旅行AIエージェントの4つのシナリオ             閲覧数第2位

5月23日

21. Speaker Alert: Bjorn Bender of Rail Europe

22. PhocusWire Daily、今週のトラベルテック記事のまとめ

23. Travaras、シード前資金調達で154万ドル

24. Hotel ID イニシャティブ、業界コミュニケーション簡素化 開始

25. スイス規制当局、Booking.com コミッション 25%カット命令

26. Google I/O 2025 による旅行への影響               閲覧数第5位

2025年5月第3週の編集人コメント

 

今週では、ホテルのリテーリング(7.の記事)、Airbnbの新プロダクトであるServices(12.の記事)、そしてExpedia GroupのAI活用(15.の記事)に注目したい。

 

「7. テクノロジー、客室収入を超えてホテルを支援しているか?

ホテル業界は、従来の「1部屋あたり収益(RevPAR)」から「1ゲストあたり収益(RevPAG)」へと注目が移っている。これは、客室だけでなく、ホテルが提供する全てのサービスや体験から収益を最大化しようという狙いだ。消費者の行動が変化し、部屋代の支出が減少する一方で、付加サービスやアンシラリープロダクトへの支出が増えていることが背景にある。AIや新しい技術を活用することで、需要を喚起し、収益を向上させることが可能になる。RevPAGは、全てのホテルに適用できるが、その方法はホテルのタイプに応じて異なる。高級ホテルでは、ゲストの好みや消費行動に基づいてパーソナライズされた体験を提供することが重要だ。

この話は、以前のニュースにも登場していたRevPAMに相通ずる話だ。RevPAMとはRevenue per available meterの略で、ホテル施設の1平米あたりの収益最大を目指す指標である。ホテル業界も、航空業界も、皆「小売」の戦略を強化している。というよりは、Amazonなどのオンラインのリテーリングに一生懸命追いつこうとしている。

 

12. Airbnb、ケータリング・マッサージ・パーソナルトレーニングなど新サービス

Airbnbは、2025年夏の発表で「Experiences」の再リリースと新しい「Services」カテゴリー、そして新しいモバイルアプリを発表した。これにより、宿泊施設だけでなく、旅行者向けの多様なサービスを提供し、全体的な旅行体験を向上させることを目指している。新しいアプリは、宿泊、サービス、エクスペリエンスの予約を一元化し、旅行中のあらゆるニーズに対応できるように設計されている。業界からは賛否両論があり、特にサービス部門はスケーリングが容易で、年間を通じてアプリの利用者を引き付けることが期待されている。

AirbnbのServicesは、民泊とは異なるサービス提供で、シェフ、マッサージ師、ヘアスタイリスト、トレーナーなどが提供する追加的なサービスを利用者が選べるようになっている。語弊があるが、何だか「便利屋」みたいな位置付けなのだろうか。日経新聞16日朝刊17面は「エアビー『スキルシェア』仲介」と伝える。誰でもサービスを販売できる(便利屋のための)オープンプラットフォームのようなものなのだろうか。

Airbnbは、事業の多角化に舵を切っているようだ。ところで、ホームに加えて航空チケット販売も取り込んだ「総合旅行社」構想はどうなっているのだろうか?

Airbnbのコネクテッドトリップに基づけば、当然、航空も取り込むことなる。航空チケットの取り扱いが実現すれば、他のOTAや旅行会社に対抗するための大きなステップとなり、より一層の多角化が進む可能性がある。

つまり、Airbnbの方向性は、宿泊業(短期レンタル)の枠を超え、旅行全体をカバーするプラットフォームへと進化している途中であり、航空チケット販売の取り込みもその一環として考えられるのかもしれない。

また、新しいモバイルアプリについて、Airbnbは「everything app」とも呼んでいる。であれば、「スーパーアプリ」と同じもののように聞こえる。しかし、よく読んでみると、このアプリは、Airbnbの多機能(ホーム + Experiences + Services)を統合したものであり、あくまで旅行関連の体験や宿泊、サービスに特化しているのだから、日常のサービスを網羅するスーパーアプリとは異なるものだ。

 

「15. Expedia Group、B2B 部門強化して新API と広告機能追加

ExpediaがAIを活用して、増収と競争力を強化している。特に、B2Bパートナーとの連携強化や、AIを通じてより効果的な旅行の発見と予約体験を旅行者に提供し、この会社が強いいB2Bの世界では提携企業の関係(増収支援)を強化することで、旅行業界でのシェアを拡大しようとしている。

AIを活用して直接的なトラフィックやパートナーシップを強化することで、Googleに支払うマーケティングコストを減少させる一助としたいのだろう。ただし、完全に依存を無くすのは難しく、Googleの広告システムは依然として重要な集客手段であるため、削減効果には限度があるかもしれない。

「20. AIによるリアルタイムのアベイラビリティと価格はホスピタリティ流通を変える:準備はできているか?」は、Google Hotels Ads広告はすでにGemini(Googleの「マルチモーダルAI、以前のBard)に表示されており、Googleが有利であることを示していると言っている。

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12. Airbnb、ケータリング・マッサージ・パーソナルトレーニングなど新サービス追加     閲覧数第1位

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19. ProsusのDespegar買収完了

20. AIによるリアルタイムのアベイラビリティと価格はホスピタリティ流通変える:準備はできているか?  閲覧数第6位

2025年 5月第2週 の編集人コメント

 

「21. 旅行業界がGoogle広告に引っ掛けられている理由(そしてそれについて何をすべきか)」は;

毎年、世界中で約2,370億ドル(約35兆円)がGoogle Adsに費やされ、Googleの収益の75%以上を占めている。多くの旅行会社はGoogle Adsに依存しており、その結果、Googleを介して顧客を引き寄せることがビジネスの成否に直結している。特に、検索エンジンの結果で上位に表示されるためには、Google Adsに投資することが唯一の方法になっている。しかし、これに依存し続けることはリスクが大きく、広告費の増大に繋がる、と指摘する。

 

ところが、AIの進展により、Googleの広告モデルに変化が訪れる可能性があるという。特に、AIを活用した新たな広告機会が登場することで、旅行業界にとっては安価な広告クリックの機会が生まれるかもしれないというのだ。

 

日経新聞 5月11日「グーグル、揺らぐネット支配  iPhoneの検索減/シェア90%割る 対話型AIへ代替進む」は、Googleはネット検索の支配的地位が揺らいでおり、特にiPhoneでの検索シェアが減少している。AppleがGoogleの検索エンジン以外のAI検索も追加する方針を発表し、これによりGoogleの広告モデルが脅かされている。従来のキーワード検索が対話型AI(例:ChatGPT)に取って代わられる可能性が高まっており、Gartnerは2026年には検索の25%がAIに置き換わると予測している。

Googleは自社で「Gemini」を開発して対話型AIに対応しているが、開発スピードや導入実績でオープンAIに後れを取っている。また、広告閲覧数が減少する可能性があり、その影響で収益の大部分を占める広告ビジネスが危機に直面している。これにより、Googleは「革新から守る側」に回ったとも言われ、25年間の支配的地位が変化しつつある。

 

Googleは、Geminiを検索エンジンや広告、Workspaceなどの各サービスに統合し、ユーザー体験の向上を図っている。これにより、従来の検索エンジンに代わる新たな情報取得手段としての地位を確立しつつある。AI技術を活用した新たな広告体験についても提供するだろう。今後、Geminiの進化とともに、Googleの広告戦略がどのように展開されるかが注目される。

 

「21. Expedia、米インバウンド低下にピンチ、カナダからの予約30%減少」が;

第1四半期の収益は299億ドルで、前年同期比で3%増加した。B2Cの収益は前年比2%減少して約19億6,000万ドルとなり、B2Bの収益は9億4,700万ドルに達し、前年同期比で14%増加した、と伝える。

第1四半期の純損失は2億ドルで、2024年の同時期の1億3,500万ドルから49%増加し、調整後EBITDAは16%増の2億9,600万ドルとなった。

 

業績が悪くないにも関わらずCEO Ariane Gorinが「feel a pinch」と言ったのは、アメリカ国内の旅行需要が鈍化し、特にカナダからの予約が大幅に減少するなどの影響を受けたため、一定の困難を感じているということなのだろう。

 

Expedia Group以外の1Q決算は、大なり小なり皆好決算を計上している。

14. Uber、第1四半期増収 自立運転自動車提携強化

総取扱高が14%増加し、約430億ドルになった。収益は14%増加し、約120億ドルになった。同社は、月間アクティブプラットフォーム消費者の14%の増加に起因して、旅行が前年比で18%増加し、30億件に達したと述べている。純利益は18億ドルで、調整後EBITDAは35%増の19億ドルであった。

「11. Sabre、航空予約低下とIT移行で第1四半期減収」

収益が1%減少し、7億7,700万ドルになった。営業利益は1億300万ドルで、前年比1%ポイント上昇し、純利益は3,500万ドルと報告した。第1四半期の調整後EBITDAは前年比5%増の1億5,000万ドルとなった。

「12. Tripadvisor:AI で旅行意図の強いトラフィックを照準」

Tripadvisor Groupは、2025年第1四半期の収益が3億9,800万ドルで、前年同期比で1%増加したと報告した。決算は予想を約1,000万ドル上回った。

同社は、第1四半期の調整後EBITDAは4,400万ドルで、総収益の11%を占め、第1四半期の純損失は1,100万ドルであると報告した。Non-GAAPの収入は2,100万ドルであった。

「15. Amadeus、世界的不安定の中で、第1四半期増益」

Amadeusは、2025年第1四半期の決算報告で、2025年に向けて「十分に準備されている」と述べた。同社のグループ収益は9%増の16億ユーロ、営業利益は前年比10%増の4億6,200万ユーロとなった。利益は前年比13%増の3億5,500万ユーロとなり、調整後EBITDAは8%増の6億2,800万ユーロとなった。

 

「トランプ関税」の関係で、2025年の旅行需要は、(きっと)悪い影響を受けるのではないだろうか。

 

「9. 航空会社、増収のためにオファー、オーダー、決済、配送をどのように活用するか?」は;

IATAの新流通能力(NDC)基準は、航空会社の販売方法を現代化するために2012年に導入された。IATAは、座席の販売ではなく、市場条件や購買パターンに応じて動的に生成される商品オファーが提供されることを目指しており、従来の運賃クラスや運賃の提出が廃止され、チケット、予約記録、追加料金が一つの記録に統合される。しかし、オファーとオーダーだけでは不十分で、決済とサービス提供の重要性も強調されているという。

航空会社は、Amazonのように「エンドツーエンド」の体験を提供し、すべてのオーダーを追跡できる能力を持つべきだとされている。Amadeusは、OOSD(オファー、オーダー、決済 Settle、提供 Delivery )を採用し、これにより旅行者体験を改善し、空港での文書確認をデジタル化する可能性があると述べている。

また、NDC導入は航空業界の経済状況や投資状況に依存しており、導入には時間がかかると予測されている。航空会社は、OOSDが収益向上につながると考えており、良い小売体験が繰り返しの購入につながると信じている。

 

A 地点から B 地点 までの航空機を利用した安全な旅行を提供するのが、小売よりも何よりも航空会社の絶対的使命だ。旅行者も、安全で定時にB地点まで行ければ、そして安ければ、ミニマムな要件は満たされる。ほとんどの航空会社が、同じ航空機を使って、ほとんど同じサービスをしている中で、差別化は根本的に難しいのが航空旅客輸送の商品だと考えてしまう。差別化と言ったって、そもそも航空会社の競争はそんなに激しくない。IATA加盟航空会社も300数十社だ。その中で、航空旅客輸送におけるパーソナリゼーションなんて本当に必要なのだろうか? 旅行者もそんなことを本気で求めていないのではないのか?

 

こんな疑問をIATAに質問すれば、きっと「差別化が難しいからこそ、OOSDが必要なのだ」と言われてしまいそうだ。

NDCは、ここまで来るのに10数年もかかっている。このペースだけは改善する必要がありそうだ。

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