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2025年5月第4週の編集人コメント

 

「20. 将来の旅行AIエージェントの4つのシナリオ」と「26. Google I/O 2025による旅行への影響」が必読だ。

 

「20. 将来の旅行AIエージェントの4つのシナリオ」

OTAのKiwi.comのVPが、AIエージェントの進化が急速に進む中、旅行業界の未来には4つのシナリオがあると指摘する。4つとは以下の通りである。

シナリオ1:Augmented booking experience(低信頼、低仲介)

シナリオ2:The AI travel concierge(高信頼、低仲介解除)

シナリオ3:Direct AI distribution channels(低信頼、高仲介解除)

シナリオ4:The neural travel marketplace(高信頼、高仲介解除)

そして、「業界は今、柔軟なデータ基盤とAI統合戦略を構築し、どの未来にも対応できる体制を整えるべき時期にある」と言っている。

 

どのシナリオが最も可能性があるのかは、明確には書いていない。しかしよく読んでみると、どうやら現時点ではシナリオ1になるようだ。

その理由は、以下の3つが考えられる。

(1)現行のOTA構造を維持したままの延長線上にあるため、業界の抵抗が少ない。

(2)既に多くのOTA(Expedia、Booking、Hotels.comなど)がAIを活用してレコメンド精度向上や検索補助を行っている。

(3)ユーザーがAIに完全な意思決定を委ねることにまだ抵抗感がある(=「低信頼」)ため、「選択肢の提示+最終判断は人間」という形は当面受け入れやすい。

 

OTAの幹部が書いている記事なので、多分にOTA擁護のスタンスに偏りがち、すなわち「中抜き(disintermediation)」無しの方向に向いているのだろうか。

当面(2025~2027年)は、シナリオ1(AIによる部分的支援)が主流になると予想される一方、将来に向けてはシナリオ2と4に向けた布石を打つことが、旅行業界全体にとって重要となるということではないだろうか。

AIによる旅行流通の本質的変化を勘案すると、自分はシナリオ4が、かなり早い段階で実現すると思う。次の「26. Google I/O 2025による旅行への影響」を読むと、なおさらそう感じてしまう。

 

「26. Google I/O 2025による旅行への影響」

Google I/O 2025で発表された新機能により、検索は「10件のリンク」から「AIによる1つの回答」へと大きく変化しつつあるという。Google Geminiを中心に、AI Mode、Deep Search、エージェント機能(Project Mariner)が強化され、旅行の計画から予約までをGoogle内で完結できるようになる。

Google I/O 2025 における旅行関連機能の一覧は、次のとおりとなる。

(1). AI Mode  検索エンジン

(2). Deep Search  パーソナライズされた旅行提案

(3). Project Mariner   インスピレーションから予約まで」を自動化

(4). Google Travel / Google Things to Do の統合表示   サイト遷移が不要

(5). Agent Checkout  商品価格監視(今後 旅行にも応用予定)

(6). Gemini Live(カメラ連携AI) ガイドが不要に

(7). リアルタイム音声翻訳(Google Meet) 同時通訳機能

(8). Android XR対応スマートグラス  現地体験をAR/AIで強化

(9). Veo 3 / Imagen 4 AIコンテンツ生成

 

これは旅行業界にとって、OTAやブログを介さない「中抜き型」直販の新時代到来を意味していないか。「中抜き」に加えて、これでコネクテッドトラベルの完璧旅行までできてしまうようだ。

 

日経新聞 5月23日朝刊「〈ビジネスTODAY〉スマホの次は『脱画面』 オープンAI、端末開発へ米社買収 音声操作に商機」は、

「OpenAIは元Apple幹部ジョニー・アイブと協力し、『画面のないAI端末』開発に乗り出す。音声操作を主軸に、スマホに代わる次世代デバイスを2026年に公開予定。スマホ依存からの脱却を目指し、AIとハードの統合で新たなプラットフォームを築こうとしている。スマホとの共存が当面続く一方、供給網や産業構造に変化をもたらす可能性がある」と伝える。

 

日経新聞5月23日朝刊「グーグルCEO『サブスクの重要性増す』先端技術の開発負担重く」は、

「GoogleのピチャイCEOは、AI開発にかかる巨額コストを背景に、サブスクリプションの重要性が今後ますます高まると強調した。新たに月250ドルの『Google AI Ultra』などを導入し、無料広告モデルから有料課金モデルへのシフトを加速。AIや量子コンピューターなど長期投資領域の持続のために、収益多様化が不可欠との見解を示した。独占批判には、技術は広く開放していると反論している」と伝えている。

 

この日経記事2つを読むと、ますますシナリオ4に傾いてしまう。

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