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2024年 1月 第4週の 編集人コメント 

 

今週は、旅行ビジネスへの投資のニュースが多かった。

7. TravelPerk増資1億4百万ドル、新法人旅行事業立上げ」、

9. Visit Group、PSGから戦略的投資1億ユーロ調達

1. 旅行投資家の2024年ダイナミックス

が、この週のPhocusWire Daily閲覧者数の上位にリストアップされた。

 

7. TravelPerk増資1億4百万ドル、新法人旅行事業立上げ」のニュースでは、スペインのTMC(法人旅行管理会社)TravelPerkが、「9. Visit Group、PSGから戦略的投資1億ユーロ調達」では、北欧の目的地ベンダーに対するソフトウエアプロバイダーVisit Groupが、それぞれ200億円~100数十億円規模の大きな額の資金調達を成功させている。

慎重な投資家たち(「1.  2024年の資金調達動向に関する旅行投資家の見解」)が、法人需要の回復(TravelPerk)と目的地のエクスペリエンス需要の増加(Visit Group)に賭けている。なお、TravelPerkの資金調達ラウンドを主導したのはソフトバンク・ビジョン・ファンド2である。

 

他にも、「4. 中東TMC Tumodo、3,500万ドル調達」と「6. Daytrip 1,000万ドル調達、ドアツードアの送迎プラットフォーム拡大」のニュースもあった。これらの2社も、前者が法人旅行、後者が目的地関連企業への投資という点で共通している。

 

投資家たちが法人旅行需要の本格的な回復に熱い視線を送る中、「パンデミックによりリモートワークとバーチャル会議が普及し、法人旅行(出張)は半減する」としたBill. Gatesの予想はもろくも覆されつつある。

 

15. 短期レンタル市場は一年を通して浮き沈みがあった:AirDNA報告」では、STR需要の弱まりとホテルの需要の回復傾向が報じられた。ホテルの回復は、宿泊者数の市場シェアの拡大というよりも、多分に宿泊単価の高い法人旅行者からの収入増によるものだろう。

 

2つのデジタル化の話も面白い。

16. アメリカン航空、デジタル流通戦略強化」は、アメリカン航空がNDCを軸にオンライン販売100%を目指していると伝える。そして、当然、GDSを排除して直販を拡大するのだろう(現在の同社のオンライン直販は52%だそうだ)。

アメリカン航空は、「旅行代理店は排除しない」と表向きには発言しているが・・・衣の下から鎧がちらほら見えている。実際にはNDCで仲介手数料をゼロにして、次は分散化台帳テクノロジーを活用して、マーケティングコストの目の上のタンコブとなっているクレジットカード手数料を全廃するのだろう。

 

オペレーションでもDX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでいる。セルフサービスは、空港では “やや標準” となりつつあり、一部の航空会社は「完全デジタル」体験の実現に取り組んでいる。チェックインデスクがなくなり、搭乗券のデジタルウォレット化が進んでいると言う。鉄道の “無人駅” 同様、航空の 「無人空港旅客接遇サービス」が広がりつつある。

 

もう一つのニュース「17. 旅行業界をデジタルで再構築」は、「消費者はすでに対面旅行代理店*(TTA)からOTAに恒久的に切り替えているため、企業はデジタルトランスフォーメーションを優先する必要がある」と訴える。

*日本の対面型旅行代理店は、英語のTraditional Travel Agencyの和訳である。日本のTTAは、「伝統的旅行代理店」という訳を嫌う。彼らは、伝統的という言葉に、何か後ろ向きなイメージがあると感じているのかもしれない。Japan Traditional Company(JTC)という言葉もある。

そして、多くの旅行プロバイダーが、AIをアプリに統合して仮想旅行計画体験を生み出すAIアシスタントを開発していると伝える。

しかし、「人と人への繋がり」を、依然として多くの旅行者が望んでいると言う。人間とテックの相互作用の混合物である「ハイタッチ」と「ハイテク」サービスが不可欠であると言うのだ。しかしその具体的方法については、「新興技術を駆使して・・・」としか述べられておらず、あまり触れられていない。そこが極めて難しいところだ。

そういえば、Thomas Cookの再建に社外から呼んで来た助っ人のHarriet Greenも、「ハイテク」と「ハイタッチ」の両立を強調していた。Greenは、自身の再建計画の完成を見ることができず、わずか2年で伝統あるこの会社の古参たちから退社に追い込まれた。1871年創立の世界最古の旅行会社Thomas Cook & Sonも2019年9月にあえなく破綻した。

 

このほか 「12. 日本ホテルテック会社Tripla、買収で東南アジア展開」といった記事があった。

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