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2025年 5月第2週 の編集人コメント

 

「21. 旅行業界がGoogle広告に引っ掛けられている理由(そしてそれについて何をすべきか)」は;

毎年、世界中で約2,370億ドル(約35兆円)がGoogle Adsに費やされ、Googleの収益の75%以上を占めている。多くの旅行会社はGoogle Adsに依存しており、その結果、Googleを介して顧客を引き寄せることがビジネスの成否に直結している。特に、検索エンジンの結果で上位に表示されるためには、Google Adsに投資することが唯一の方法になっている。しかし、これに依存し続けることはリスクが大きく、広告費の増大に繋がる、と指摘する。

 

ところが、AIの進展により、Googleの広告モデルに変化が訪れる可能性があるという。特に、AIを活用した新たな広告機会が登場することで、旅行業界にとっては安価な広告クリックの機会が生まれるかもしれないというのだ。

 

日経新聞 5月11日「グーグル、揺らぐネット支配  iPhoneの検索減/シェア90%割る 対話型AIへ代替進む」は、Googleはネット検索の支配的地位が揺らいでおり、特にiPhoneでの検索シェアが減少している。AppleがGoogleの検索エンジン以外のAI検索も追加する方針を発表し、これによりGoogleの広告モデルが脅かされている。従来のキーワード検索が対話型AI(例:ChatGPT)に取って代わられる可能性が高まっており、Gartnerは2026年には検索の25%がAIに置き換わると予測している。

Googleは自社で「Gemini」を開発して対話型AIに対応しているが、開発スピードや導入実績でオープンAIに後れを取っている。また、広告閲覧数が減少する可能性があり、その影響で収益の大部分を占める広告ビジネスが危機に直面している。これにより、Googleは「革新から守る側」に回ったとも言われ、25年間の支配的地位が変化しつつある。

 

Googleは、Geminiを検索エンジンや広告、Workspaceなどの各サービスに統合し、ユーザー体験の向上を図っている。これにより、従来の検索エンジンに代わる新たな情報取得手段としての地位を確立しつつある。AI技術を活用した新たな広告体験についても提供するだろう。今後、Geminiの進化とともに、Googleの広告戦略がどのように展開されるかが注目される。

 

「21. Expedia、米インバウンド低下にピンチ、カナダからの予約30%減少」が;

第1四半期の収益は299億ドルで、前年同期比で3%増加した。B2Cの収益は前年比2%減少して約19億6,000万ドルとなり、B2Bの収益は9億4,700万ドルに達し、前年同期比で14%増加した、と伝える。

第1四半期の純損失は2億ドルで、2024年の同時期の1億3,500万ドルから49%増加し、調整後EBITDAは16%増の2億9,600万ドルとなった。

 

業績が悪くないにも関わらずCEO Ariane Gorinが「feel a pinch」と言ったのは、アメリカ国内の旅行需要が鈍化し、特にカナダからの予約が大幅に減少するなどの影響を受けたため、一定の困難を感じているということなのだろう。

 

Expedia Group以外の1Q決算は、大なり小なり皆好決算を計上している。

14. Uber、第1四半期増収 自立運転自動車提携強化

総取扱高が14%増加し、約430億ドルになった。収益は14%増加し、約120億ドルになった。同社は、月間アクティブプラットフォーム消費者の14%の増加に起因して、旅行が前年比で18%増加し、30億件に達したと述べている。純利益は18億ドルで、調整後EBITDAは35%増の19億ドルであった。

「11. Sabre、航空予約低下とIT移行で第1四半期減収」

収益が1%減少し、7億7,700万ドルになった。営業利益は1億300万ドルで、前年比1%ポイント上昇し、純利益は3,500万ドルと報告した。第1四半期の調整後EBITDAは前年比5%増の1億5,000万ドルとなった。

「12. Tripadvisor:AI で旅行意図の強いトラフィックを照準」

Tripadvisor Groupは、2025年第1四半期の収益が3億9,800万ドルで、前年同期比で1%増加したと報告した。決算は予想を約1,000万ドル上回った。

同社は、第1四半期の調整後EBITDAは4,400万ドルで、総収益の11%を占め、第1四半期の純損失は1,100万ドルであると報告した。Non-GAAPの収入は2,100万ドルであった。

「15. Amadeus、世界的不安定の中で、第1四半期増益」

Amadeusは、2025年第1四半期の決算報告で、2025年に向けて「十分に準備されている」と述べた。同社のグループ収益は9%増の16億ユーロ、営業利益は前年比10%増の4億6,200万ユーロとなった。利益は前年比13%増の3億5,500万ユーロとなり、調整後EBITDAは8%増の6億2,800万ユーロとなった。

 

「トランプ関税」の関係で、2025年の旅行需要は、(きっと)悪い影響を受けるのではないだろうか。

 

「9. 航空会社、増収のためにオファー、オーダー、決済、配送をどのように活用するか?」は;

IATAの新流通能力(NDC)基準は、航空会社の販売方法を現代化するために2012年に導入された。IATAは、座席の販売ではなく、市場条件や購買パターンに応じて動的に生成される商品オファーが提供されることを目指しており、従来の運賃クラスや運賃の提出が廃止され、チケット、予約記録、追加料金が一つの記録に統合される。しかし、オファーとオーダーだけでは不十分で、決済とサービス提供の重要性も強調されているという。

航空会社は、Amazonのように「エンドツーエンド」の体験を提供し、すべてのオーダーを追跡できる能力を持つべきだとされている。Amadeusは、OOSD(オファー、オーダー、決済 Settle、提供 Delivery )を採用し、これにより旅行者体験を改善し、空港での文書確認をデジタル化する可能性があると述べている。

また、NDC導入は航空業界の経済状況や投資状況に依存しており、導入には時間がかかると予測されている。航空会社は、OOSDが収益向上につながると考えており、良い小売体験が繰り返しの購入につながると信じている。

 

A 地点から B 地点 までの航空機を利用した安全な旅行を提供するのが、小売よりも何よりも航空会社の絶対的使命だ。旅行者も、安全で定時にB地点まで行ければ、そして安ければ、ミニマムな要件は満たされる。ほとんどの航空会社が、同じ航空機を使って、ほとんど同じサービスをしている中で、差別化は根本的に難しいのが航空旅客輸送の商品だと考えてしまう。差別化と言ったって、そもそも航空会社の競争はそんなに激しくない。IATA加盟航空会社も300数十社だ。その中で、航空旅客輸送におけるパーソナリゼーションなんて本当に必要なのだろうか? 旅行者もそんなことを本気で求めていないのではないのか?

 

こんな疑問をIATAに質問すれば、きっと「差別化が難しいからこそ、OOSDが必要なのだ」と言われてしまいそうだ。

NDCは、ここまで来るのに10数年もかかっている。このペースだけは改善する必要がありそうだ。

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