top of page

2025年 11月第2週 編集人コメント

 

Booking Holdingsの第3四半期は、増収増益の好決算となった。

ハイライト

  • 代替宿泊(Alternative Accommodation)
    2025年第3四半期の代替宿泊(AA)宿泊室数は前年比約10%増加し、全体構成比は36%へ上昇。掲載件数(listings)も前年比10%増となった。

  • モバイル予約
    直近12か月(TTM)におけるモバイルアプリ経由の予約構成比は50%台半ばに達し、2024年第3四半期(50%台前半)から上昇。

  • 直販(Direct Sales)
    直近12か月におけるB2C(Business-to-Consumer)直販構成比は60%台半ばで、前年同期(60%台前半)から上昇。アプリ利用比率とともに直販チャネルの強化が進む。

  • コネクテッド・トリップ(Connected Trip)
    Booking.com全体で「宿泊・交通・体験を一体化したConnected Tripモデル」の推進を強調。AI活用により、予約体験のシームレス化・パーソナライズ化を進めている。

 

損益計算書(単位:US$ Million)

貸借対照表・キャッシュフロー

  • 第3四半期に、株主還元として自社株買い約7億ドルを実施し、配当3億ドルを支払った。
    さらに高利付債の償還に約15億ドルを充当。

  • 営業キャッシュフローおよびフリーキャッシュフローはいずれもプラス。
    年初からの累計(YTD)でフリーキャッシュフロー約77億ドル(前年比+6%)。
    旅行需給の回復とともに、キャッシュ創出力が維持されている点は評価できる。

  • 2025年2月、取締役会は200億ドル規模の新たな自社株買いプログラムを承認。
    今四半期末時点で累計180億ドルの買戻しを実施済み。

  • キャッシュ&有価証券残高は約172億ドル(9月30日時点)と潤沢であり、株主還元・債務償還を両立しつつ、財務の健全性と流動性を保っている。
     

AIとトラベルテック戦略

決算では「Generative AI」「AI統合」「パーソナライズされたConnected Trip体験」が主要テーマとして取り上げられた。同社はOpenAIとのテストプログラムを進めており、AIを通じて「顧客とサプライヤー双方に価値を提供する」仕組みを構築中。

旅行流通の観点では、AIが「宿泊・交通・体験」を統合する中核基盤となっており、マーチャントモデルと組み合わせることで、より多面的な収益機会を生み出している。
検索・レコメンド・チャットボット・リスティング最適化といったAI機能が、効率化・差別化・付加価値化を支えている。実際、報道でも「AIが予約増を後押しした」との評価が見られる。


マーチャント販売の進展

Booking Holdingsのマーチャント販売(自社決済)モデルは明らかに加速。
マーチャント・グロスブッキング比率は61%→68%へ上昇し、前年同期比+26%の成長を記録した。
構造転換が進む一方、マージン圧・運転資本リスク・返金・キャンセル対応などの負荷も高まっており、キャッシュフロー管理の巧拙が問われる段階にある。

 

総評

この決算は、旅行流通・トラベルテック両面で以下の示唆を与える。

  1. 「量」から「価値」への転換期
    Bookingは泊数・予約数の拡大フェーズを超え、今後は「予約単価」「ロイヤルティ」「直販率」「代替宿泊やライフスタイル領域拡大」など、価値創造フェーズへ移行している。

  2. チャネル構造の複雑化と最適化
    メタサーチ、直販、サブスクリプション、AI旅行プランニングの台頭により、OTAは“仲介”から“ソリューション提供者”へ変貌中。今回の決算でも直販比率・アプリ利用率上昇が確認され、チャネル戦略の成果が表れている。

▪️

bottom of page