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2025年10月第5週の編集人コメント

 

8. 3人のイノベーターが語る、再発明、AI、メタサーチの第二幕

かつてオンライン旅行業界を変革したSkyscannerのGareth Williams、WegoのRoss Veitch、Travel.jpのKei Shibataが、シンガポールでメタサーチの過去と未来を語った。Skyscannerは創業者の個人的な不便から生まれ、Wegoは自らOTA機能を持つハイブリッド型へ進化し、Travel.jpはLINE提携など挑戦と試行錯誤を重ねてきた。3人はGoogle依存の限界を認めつつ、AIがもたらす「第2のメタサーチ」に期待を寄せた。AIは旅行者の意図を理解し、真のパーソナルアシスタントとして機能する可能性を秘めていると語り、決済革新やテーマ旅行など新たな価値創造の必要性を示した。彼らは、2045年には旅行が人生の中心、世界最大の産業になると展望する。

しかし、エージェンティックAIの時代には、従来のように「メタで比較し、OTAで予約する」という分業は溶けていくはずだ。AIが情報提示から予約・体験まで一気通貫で担えるようになれば、メタとOTAという産業構造そのものが再定義される。ユーザーにとって重要なのは「どのAIが自分の嗜好・条件・履歴を理解し、信頼できる旅を設計してくれるか」という点に変わる。競争の軸は“Meta vs OTA”から“AI vs AI”へ移行し、企業ブランドではなく、どのAIエージェントがユーザーとの信頼関係を獲得できるかが問われる。旅行流通は「プラットフォームの時代」から「エージェントの時代」へ向かっている。

10. メッセージ受信:旅行業界におけるWhatsAppの役割

この記事でも、この「エージェントの時代」に向かう流れが、WhatsAppを通じて具体的に見えはじめている。ポイントは、SNSが単なる広告や情報拡散の場ではなく、AI旅行エージェントがユーザーと最初につながる“入り口”になりつつあるということだ。

旅行者はもはや検索サイトやOTAにアクセスする前に、日常的に使っているWhatsAppやLINEのようなメッセージアプリ上で旅の相談を始める。そこで交わされる会話は、AIがユーザーの嗜好・履歴・状況を理解するための生きたデータとなり、そのまま提案・予約・変更対応へと接続される。つまりSNSは、情報発信の媒体ではなく、AIが「旅の伴走者」として入り込む生活動線そのものに変わりつつある。

旅行会社やOTAにとって重要なのは、Google検索で顧客を奪い合うことではなく、ユーザーの生活圏であるWhatsAppやLINEの中で、AIが自然に対話を開始し、信頼関係を築けるかどうかだ。ここでも主役はブランドではなく、「どのAIが旅の代理人として選ばれるか」である。SNSはその接点であり、旅行流通の「入口」が再発明されつつある現場なのだ。

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