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2025年5月第3週の編集人コメント

 

今週では、ホテルのリテーリング(7.の記事)、Airbnbの新プロダクトであるServices(12.の記事)、そしてExpedia GroupのAI活用(15.の記事)に注目したい。

 

「7. テクノロジー、客室収入を超えてホテルを支援しているか?」

ホテル業界は、従来の「1部屋あたり収益(RevPAR)」から「1ゲストあたり収益(RevPAG)」へと注目が移っている。これは、客室だけでなく、ホテルが提供する全てのサービスや体験から収益を最大化しようという狙いだ。消費者の行動が変化し、部屋代の支出が減少する一方で、付加サービスやアンシラリープロダクトへの支出が増えていることが背景にある。AIや新しい技術を活用することで、需要を喚起し、収益を向上させることが可能になる。RevPAGは、全てのホテルに適用できるが、その方法はホテルのタイプに応じて異なる。高級ホテルでは、ゲストの好みや消費行動に基づいてパーソナライズされた体験を提供することが重要だ。

この話は、以前のニュースにも登場していたRevPAMに相通ずる話だ。RevPAMとはRevenue per available meterの略で、ホテル施設の1平米あたりの収益最大を目指す指標である。ホテル業界も、航空業界も、皆「小売」の戦略を強化している。というよりは、Amazonなどのオンラインのリテーリングに一生懸命追いつこうとしている。

 

「12. Airbnb、ケータリング・マッサージ・パーソナルトレーニングなど新サービス」

Airbnbは、2025年夏の発表で「Experiences」の再リリースと新しい「Services」カテゴリー、そして新しいモバイルアプリを発表した。これにより、宿泊施設だけでなく、旅行者向けの多様なサービスを提供し、全体的な旅行体験を向上させることを目指している。新しいアプリは、宿泊、サービス、エクスペリエンスの予約を一元化し、旅行中のあらゆるニーズに対応できるように設計されている。業界からは賛否両論があり、特にサービス部門はスケーリングが容易で、年間を通じてアプリの利用者を引き付けることが期待されている。

AirbnbのServicesは、民泊とは異なるサービス提供で、シェフ、マッサージ師、ヘアスタイリスト、トレーナーなどが提供する追加的なサービスを利用者が選べるようになっている。語弊があるが、何だか「便利屋」みたいな位置付けなのだろうか。日経新聞16日朝刊17面は「エアビー『スキルシェア』仲介」と伝える。誰でもサービスを販売できる(便利屋のための)オープンプラットフォームのようなものなのだろうか。

Airbnbは、事業の多角化に舵を切っているようだ。ところで、ホームに加えて航空チケット販売も取り込んだ「総合旅行社」構想はどうなっているのだろうか?

Airbnbのコネクテッドトリップに基づけば、当然、航空も取り込むことなる。航空チケットの取り扱いが実現すれば、他のOTAや旅行会社に対抗するための大きなステップとなり、より一層の多角化が進む可能性がある。

つまり、Airbnbの方向性は、宿泊業(短期レンタル)の枠を超え、旅行全体をカバーするプラットフォームへと進化している途中であり、航空チケット販売の取り込みもその一環として考えられるのかもしれない。

また、新しいモバイルアプリについて、Airbnbは「everything app」とも呼んでいる。であれば、「スーパーアプリ」と同じもののように聞こえる。しかし、よく読んでみると、このアプリは、Airbnbの多機能(ホーム + Experiences + Services)を統合したものであり、あくまで旅行関連の体験や宿泊、サービスに特化しているのだから、日常のサービスを網羅するスーパーアプリとは異なるものだ。

 

「15. Expedia Group、B2B 部門強化して新API と広告機能追加」

ExpediaがAIを活用して、増収と競争力を強化している。特に、B2Bパートナーとの連携強化や、AIを通じてより効果的な旅行の発見と予約体験を旅行者に提供し、この会社が強いいB2Bの世界では提携企業の関係(増収支援)を強化することで、旅行業界でのシェアを拡大しようとしている。

AIを活用して直接的なトラフィックやパートナーシップを強化することで、Googleに支払うマーケティングコストを減少させる一助としたいのだろう。ただし、完全に依存を無くすのは難しく、Googleの広告システムは依然として重要な集客手段であるため、削減効果には限度があるかもしれない。

「20. AIによるリアルタイムのアベイラビリティと価格はホスピタリティ流通を変える:準備はできているか?」は、Google Hotels Ads広告はすでにGemini(Googleの「マルチモーダルAI、以前のBard)に表示されており、Googleが有利であることを示していると言っている。

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