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2025年11月第3週の編集人コメント

 

先週のBooking Holdingsの四半期決算に続いて、Expedia Groupの決算を分析する。

 

1. ハイライト

  • 需要環境と成長

グロスブッキング:30.7Bドル(+12%)

売上高:4,412Mドル(+9%)

予約宿泊数:1.08億泊(+11%、米国の成長は過去3年で最高)

  • 利益とマージン

営業利益:1,036Mドル(+36%)、営業利益率23.5%(前年18.8%)

純利益:959Mドル(+40%)、EPS 7.33ドル(+45%)

Adjusted EBITDA:1,449Mドル、EBITDAマージン32.9%(+2.1pt)

  • 事業別動向(B2C vs B2B)

B2Cグロスブッキング:+7%、売上高+4%、Adj. EBITDAマージン40.7%

B2Bグロスブッキング:+26%、売上高+18%、Adj. EBITDAマージン28.9%
成長ドライバーは明確にB2B側。

  • 資本政策

Qに自社株買い451Mドル(約230万株)、配当0.40ドル/株を実施。

 

2. 損益計算書(概要)

(単位:百万ドル)

マーケティング費用(Selling & marketing)は以下の通り:

  • ダイレクト(主にオンライン広告・パートナーコミッション)

1,976Mドル(+7%)、売上高比 44.8% 

  • インダイレクト(ブランドマーケ等)

211Mドル(+7%)、売上高比 4.8% 

マーケティング関連合計は売上の 約50% を占める構造。BKNG(約30%台)より依然として重い。

 

3. B/SとC/F

CFは季節要因で四半期ベースはぶれるが、過去12ヶ月間で見ると安定したFCFマシン((Free Cash Flow Machine)に戻りつつある。

 

4. AIとトラベルテック戦略

  • AI投資の位置づけ

プレゼン資料では、B2Bと並ぶ重点投資先として「AI」を明示。開発者生産性向上、カスタマーサービスの解決スピード改善、マーケティング効率化にAIを活用していると説明。

Expedia が誇る B2B モデルの肝は:

✔ Rapid API

✔ AI Trip Planner(B2B向け)

✔ Smart Trip AI™(旅行代理店・航空会社・金融アプリなどの外部パートナー向けの AI Trip Planner。Partnerサイト/アプリに AI Trip Planning を統合できる。)

✔ Comet(AI旅行ブラウザ)

✔ 支払い・税務・在庫管理のインフラ提供

これらは TAAP (Travel Adent Affiliate Program) ではなく EPS. (Expedia Partner Solutions) (API/ホワイトレーベル) の領域。

B2Cでは「Consumer GenAI Search Experience」を前面に出し、検索→比較→予約までの一連の体験を生成AIで再設計している。B2Cではコンシューマー向けAIエージェント Romieを持つ。

  • 具体的なAD/ユースケース

GenAI検索体験:自然文での相談から、宿泊・航空・体験などを束ねた候補を提示する対話型UI(アプリ内)

マーケ効率化:B2Cの「leverage against marketing spend」として、AIで入札・クリエイティブ・ターゲティングを高度化し、同じ広告費でより多くの予約・高いマージンを狙う構図。

開発とCS:AIを使ったコード生成・自動テストや、問い合わせ内容の自動要約・回答提案などでコスト削減とスピード向上を図っている。

  • OpenAIとの提携

2023年にChatGPT連携の会話型トリッププランニング機能をアプリ内に実装し、その後もChatGPT向けプラグイン/アプリとしてExpedia機能を提供。

2025年秋には、OpenAIの「ChatGPTアプリ・エコシステム」における主要トラベルアプリの一つとして位置づけられ、ChatGPT内から直接検索・比較・予約まで完結できるようになった。

Expediaは「自社サイト+アプリ」だけでなく、「ChatGPTという外部AIエージェント内でのレイヤー支配」を狙っている点がBookingより前のめりと言える。

 

5. マーチャント販売(Merchant)とビジネスモデル

10-Qによる売上モデル別内訳(3Q 2025): ​​

  • マーチャント売上は2桁成長、構成比も7割まで上昇。増分は主にロッジング(ホテル+Vrbo等)。

  • エージェンシー売上は横ばいで、ビジネスモデルの軸足が明確にマーチャント側へ移行している。

  • 広告・メディア(EG Advertising)は+16〜20%成長と高い伸びで、在庫・需要データを活かしたトラベルメディアビジネスが拡大。

Bookingと同様、「マーチャント+広告+B2B」の組み合わせでマージンを引き上げる構造転換が進行中。ただしマーチャント比率が高い分、運転資本・キャンセル波・チャージバック等のリスク管理はより重要になる。

 

6. 総評(Bookingとの比較の観点も含めて)

  • 業績面

Expedia 3Qは「グロスブッキング+12%、売上+9%、営業利益+36%」と、トップライン・利益ともにガイダンス上振れ、かつマージン拡大という文句のない内容。

BKNGも売上+13%、グロスブッキング+14%と強いが、もともと利益率が高い分、マージン改善のインパクトはExpediaの方が大きく見える。

  • ビジネスモデルと戦略の違い

Expedia:B2B+広告+マーチャントに重点。米国中心で、ChatGPT連携を含むAI×ディストリビューションの実験場になっている。

Booking:代替宿泊・直販・アプリ・コネクテッドトリップなど、「欧州中心の巨大B2Cプラットフォーム」としての深化がメイン。マーチャント比率は約68%と上昇中だが、ExpediaほどB2B依存ではない。

  • マーケ効率

売上に対するマーケティング比率は、Expediaが約50%、Bookingが約30%前後。ExpediaはAIで効率化を進めつつあるが、依然として広告依存度が高く、ここをどこまで削れるかが中期テーマ。

 

Expediaのこの決算からは「AI時代の旅行OS化」へ向かう明確な兆候が読み取れる。

✔ Expedia では、AI時代向けの“ビジネスモデル転換”が既に始まっている。

✔ その中心は B2B成長・在庫API化・AI Trip Plannerの外販という「インフラ化」。

✔ B2C側でも Comet や Romie で“アプリ内AIブラウザ”へ転換。

✔ マーケ効率とキャッシュフロー改善が、AI投資を継続可能にしている。

OTAが弱体化するどころか、AI時代に合わせて 「旅行のOS」「AIの裏側レイヤー」へ進化していると言えるだろう。

 

次週の編集人コメントでは、Booking HoldingsとExpedia Groupの

株式市場の評価を含めた比較を予定しています。

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