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2024年 12月第5週 の 編集人コメント

 

12月ともなると、毎年「その年の回顧と翌年の展望」の記事が多く掲載される。

回顧する記事だけでも、

12月第2週の「7. PhocusWire 2024年トップオピニオンストーリー」、

12月第3週の「7. 2024年の旅行のムーバー、シェーカー、ニュースメーカー」と「8. 2024 PhocusWire トップ10ニュース記事」が掲載されている。

 

日本の旅行・観光業界 10大ニュースは、トラベルジャーナルとトラベルボイスの2誌で、それぞれ以下のニュースが取り上げられている。

 

トラベルジャーナル

1位[              訪日客、過去最高の3,500万人へ

2位               訪日外国人消費額、年間8兆円も視野に

3位               海外旅行訴求も回復弱く 6割台どまり

4位               円安加速、1ドル160円水準に悲鳴

5位               中国の旅行関連

6位               人材獲得競争が加速、賃金改定相次ぐ

7位               時間外労働規則、ツアー手配に影響

8位               宿泊税に旅客税、財源の議論高まる

9位               サステナブル観光、活動に深化と広がり

10位             訪日客への二重価格の議論広がる

 

トラベルボイス

1位               JAL機の衝突事故、海外メディアは全員脱出を「まさに奇跡」と報じる (1月3日)

2位               能登半島地震関連

3位               俳優・山口智子さんが語る旅のチカラとは?(11月28日)

4位               北陸新幹線延伸は「100年に1度の好機」、福井県が取り組みを取材(1月12日)

5位               中国の旅行関連

6位               ジャパネットが宿予約「ゆこゆこ」をグループ化した理由とは? (9月5日)

7位               オーバーツーリズム関連(国内外)

8位               修学旅行の最新トレンド

9位               日本のホテル、外資系ホテルにリブランド続々

10位             富士山の入山規制関連

 

PhocusWireと日本の旅行・観光業界誌を比較すると、その内容に大きな違いがある。これは当然のことだ。太平洋の両岸では起きている事象が異なり、それを報じるニュースの焦点が変わるのも必然である。  

 

しかし、同じ日本国内のニュースを扱うトラベルジャーナルとトラベルボイスの間にも、顕著な違いが見られるのはなぜだろうか。読者層の違いが主な要因なのかもしれないが、それだけでは説明がつかないように思える。日本の旅行・観光業界には、一貫した明確な「業界力」とでもいうべきものが欠如しているのではないか、という疑念が拭えない。  

 

これら日本の旅行・観光業界誌の10大ニュースは、インバウンド(訪日旅行)に関するニュースが圧倒的に多い。一方で、トラベルテックや個々の旅行代理店に関する報道(新商品開発、M&A、人事、経営実績など)は極端に少ない。例えば、トラベルジャーナルのニュースランキング(10位以下~30位圏内)を見ると、「観光DX、面的活性化や課題解決で活発」(20位)がようやく登場する程度である。  

 

インバウンド関連記事が多いのは理解できる。年間4,000万人近くもの訪日客が押し寄せているのだから当然だ。しかし、それにしても個別の旅行会社に関する記事がほぼ皆無なのは不可解である。  

その理由の一つとして考えられるのは、企業側が情報開示を極端に制限していることだ。大手の伝統的旅行代理店(TTA)は、自社のオンライン販売比率を開示したことがない。また、大手オンライン旅行代理店(OTA)のほとんども、取扱高すら公表していないのが現状だ。  

 

あるいは、単にニュースになるような出来事がこの1年間なかったのだろうか? もしそうだとすれば、これは深刻な問題ではないか。

 

「JTC(Japan Traditional Company)」という言葉がある。これは、伝統的な日本の会社を指す。作家の堺屋太一は2016年に、「欲ない、夢ない、やる気ない(3Y)……現代日本の最大の危機はこの『3Y』にある」と喝破した。  

 

米Fortune誌の「2023年世界売上高ランキング500社」において、日本企業の数は、かつての約150社からわずか41社にまで減少した。同様に、日本のTTAの中の第1種旅行業者*も、2024年4月時点で609社と、5年連続で減少している。 

*第1種旅行業登録を持つTTAで、国内外の募集型企画旅行、手配旅行、他社商品の販売など、あらゆる旅行業務を扱うことができる旅行代理店。

 

 大手TTAの多くは、旅行事業からBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)ソリューション事業へと軸足を移し、多角化を進めている。旅行業で培ったノウハウを成長領域のBPO事業に活用する戦略とはいえ、世界最大級の産業へと成長しつつある旅行業を、中核事業から外すとは驚くべきことだ。

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