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​2025年 6月第1週の編集人コメント

今週号では、16. Airbnbの「Services」、ホストにとって不公平なのか? と「22. NDC、動的価格、オファー、オーダーによる(まだ実現されていない)顧客の利点」が面白い。

16. Airbnbの「Services」、ホストにとって不公平なのか?

Airbnbが開始した「Services」は、ゲスト向けにマッサージやシェフなどの追加サービスを提供する新機能だが、ホストには収益が還元されず、リスクと負担だけが増えると批判されている。しかも、サービスはデフォルトで自動適用(オプトアウト方式)されており、ホストの同意がないまま自宅で商業活動が行われる可能性もある。業界関係者は、収益分配、ホストの関与、任意参加の仕組み(オプトイン方式)を求めている。

この問題の根本には、商品開発のプロセスにホストや地域が関与していないことがある。最初から、地元DMOやホストを巻き込んだ商品造成チームの設置が必要だったのではないだろうか。

近年では、「目的地でのTours & Activities(T&A)」が旅行の主軸となりつつある。この記事は、先月のPhocusWire Dailyに掲載された「旅行者はますますパーソナルなT&Aを求めているのに、旅行会社は宿泊や移動手段に偏っている」という指摘を想起させる。

旅の醍醐味は、目的地での体験にある。であれば、中心がホストの家で提供される付帯サービスである必要はない。むしろ、地域全体をフィールドとした広範囲でオーセンティックなT&A商品の開発こそが求められる。

民泊のパイオニアであるAirbnbが、ホテルの付帯サービスを真似るような形で終わってしまうのは残念である。本来あるべき姿に立ち戻り、地域の魅力を活かした競争力あるダイナミックな体験型商品を構築してほしいものだ。

 

22. NDC、動的価格、オファー、オーダーによる(まだ実現されていない)顧客の利点

航空業界が推進するNDCやダイナミックプライシングは、「パーソナライズされた柔軟な旅行体験の実現」を目指して導入が進められてきた。しかし、巨額の投資にもかかわらず、顧客にとっての明確なメリットはほとんど実現されていない。業界がNDCの可能性を真に実現するには、標準化、透明性、顧客中心の設計が不可欠である。さもなければ、NDCは空論に終わり、顧客の信頼を失う危険があると言っている。

 

NDCは、2012年にIATAによって、その仕様が初めて公開された。13年もかかっても、普及率や完成度は部分的にとどまっている。オファーとオーダーを本格的に稼働させるには、さらに少なくとも5年以上はかかるらしい。

こんなテンポでは、加速度的に進化しているAIへの対応ができないのではないだろうか? AIの進化によって、NDC構想自体がレガシーシステムとなって、新たな技術的負債を作りかねない。

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