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2月第4週の編集人コメント

 

「9. アンシラリー AI、顧客価値作る」が、AIを活用したアンシラリー商品の最適化が、航空会社の収益向上に貢献。動的価格設定により、顧客の好みに合わせたオファーをリアルタイムで提供している、と伝える。AI主導のモデルが価格弾力性を分析し、パーソナライズされた体験を実現。AirBalticの事例では、6%の収益増加を達成したという。

ここでは、アンシラリーについて解説してみたい。

 

LCC航空会社は、低運賃を実現するために、削り取ることができる全てのサービスを無くしてしまった。いわゆる「ノーフリルサービス」のビジネスモデルを開発した。ノーサービスにした分、運賃を引き下げることができたのだ。

そして削り取ったサービスの、座席指定、受託手荷物、機内食、空港ラウンジなどを次々と有料とし、それに加えて旅行保険やレンタカー、ホテル予約などもアンシラリー商品に加えて積極的に販売するようになった。

FSC航空会社(Full Service Carrier)も、競争上、同じように “裸の運賃”(barebornes)とか ”ベーシック運賃” とも呼ばれる低運賃を作るようになった。

そしてこれらのアンシラリー商品は、レストランにおける定食とアラカルトの分離に倣って、アラカルトとも呼ばれている。さらに述べれば、アンシラリー運賃の対極として、全てのサービスを束ね合わせたFSCの運賃を、バンドル(bundled)と呼んでいる。また、航空会社独自でバンドル化した運賃は、ブランド運賃(branded fare)とも呼ぶ。FSCのアンシラリー商品には、常顧客プログラムのマイレッジポイントのクレジットカード会社販売も含まれる。

 

IdeaWorks社の2023年アンシラリー収入報告書によれば、世界のトップ10航空会社のアンシラリー収入は541億ドル(約6兆円)に達し、年々大幅に増加している。LCCでは、アンシラリー販売増収に懸命で、旅客収入のなんと最大50%を構成するLCCまで現れた。あるLCCが、機内のトイレを有料化しようとして、物議を醸したこともあるくらいだ。

 

アンシラリー販売は、航空会社の優れたマーケティングとされている一方、一部では、消費者を惑わす「狡猾な販売戦術」(例えばドリッププライシングとかオプトアウトとか)に繋がると言うネガティブな評価も存在する。

規制当局は、消費者保護の観点から、オンラインで表示する運賃には、その運賃に付随する全ての有料サービスの内訳を、最初の検索段階で(最後の予約の段階ではなく)、はっきり表示させることを義務付けた。

 

また、この航空会社のアンシラリー商品販売のマーケティングは、ホテル業界にも伝播している。ホテルは、ルームサービス、客室アップグレード、レートチェックイン、スパやジムなどのホテル施設内で利用可能なサービスのアンシラリー販売に力を入れている。そして最近では、客室の時間貸しに加え、施設外のホテル周辺の体験(エクスペリエンス)までも商品化している。

 

Tripadvisor Groupは、2024年に体験の記録的な収益を報告した。同社の体験予約サイトViatorは、2022年の33%から昨年の同社の総収益の46%を占めている。(「12. トリアドG、エクスペリエンスが戦術とファイナンシャルのセンターに」)

 

航空会社やホテルは、パーソナライズしたアンシラリー商品の販売に力

を入れている。

(編集人)

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