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2025年 6月第2週の編集人コメント​

Phocuswright Europe Conferenceが、6月10日~13日、バルセロナで開催された。今週の記事の多くが、この会議の模様を伝える。もちろんトラベルテックのAIが、この会議の主題となっている。(今週の記事で「AI」は227回引用されてる。記事数は20なので、1記事に平均約13回「AI」が使われている。

今週の閲覧者数最大の記事「4. 旅行業界、エージェンティック・コマース準備整っているか」もAI関連だ。これが、次のようなことを言っている。

旅行業界に「Agentic Commerce(AIが自動で購入を行う仕組み)」の波が迫っている。Visa、Mastercard、PayPal、Googleなどが相次いで対応技術を発表。旅行予約でもAI Agentが人に代わって決済・予約を行う時代が近づいている。

業界はまだ準備不足だが、SabreやStripeなどが支払いインフラを整備中。今後は新たな予約チャネルが爆発的に増えると予測されている。

課題は信頼性とセキュリティ。消費者の信用を得るには、AIに明確な権限設定と支払い情報の管理が必要。とはいえ、中小企業も恩恵を受けられる可能性があり、旅行業界全体に大きな影響を与えると期待されている。

 

Agentic Commerceとは、AIが人間の代わりに自律的に商取引を行う仕組みを指す。旅行分野におけるAgentic Commerceとは、人間の意思を受けたAI Agentが、検索から支払いまでを自律的に完了させる新しい商取引の形をさす。

AI Commerceの具体例としては、GoogleのAgentic Checkout、Gemini in Shopping / Lens / Glasses、VisaのIntelligent Commerce、MastercardのAgent Pay、PayPalのPayPal Agent Toolkit、OpenAI(ChatGPT)のProduct Recovery、StripeのAI Foundation Model for Paymentsなどがある。

 

Agentic Commerceを実行するのが AI Agentとなる。AI Agentは、自律性があり、意思決定を行い、実際の行為を人に代わって実行する。情報検索や意思決定の支援を行うAI Assistantよりは格段に能力が向上している。

(AI Assistantでは、AmazonのAlexaや、AppleのSiriなど、または“xxxのCopilot” が市場に多く出回っている。これらのAI Assistantといえども、技術の進化に伴いAI Agentになりつつある。)

 

AI Agentは、従来の「検索→比較→クリック→予約」のUXを不要にし、消費者がChatGPTやGoogle経由で直接予約する、つまり生成AI経由の販路が増加して、OTAを経由しない購買が増加させることになるという。OTAの「存在感」や「比較(検索)機能」は、AIに吸収される可能性が高いというのだ。

OTAは、自社コンテンツ・在庫をAI Agentと連携できるようAPI経由で開放したり、自ら自社専用のAI Agentを開発したり、直接予約を維持することを考えている。そのほか、AI Agentでも探せない特別オファーや独自商品の提供(例:パッケージ、ローカル体験)に注力している。特別オファーには、ロイヤルティプログラムは当然のこと、Bookingの “コネクテッド・トリップ” も含まれるのだろう。

 

 

そのほか、「1. 未来への飛行:IATA事務総長「テック第一思考」要求、年次総会で」で、事務総長Willie Walshが、デジタル化・データ活用・持続可能性重視」の未来へ進まなければ取り残されると警鐘を鳴らした。年50億人以上の乗客と9.790億ドルの収益を支える航空業界にとって、飛行機や乗客以上に重要なのは、テクノロジーをいかに賢く活用するかだと訴えた。

 

先週の「22. NDC、動的価格、オファー、オーダーによる(まだ実現されていない)顧客の利点」の、航空会社の自分自身のテクノロジー開発遅れの問題については、(この記事を読む限りでは、)なぜか一言も触れられていない。

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