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2024年 5月第4週 の 編集人コメント

​ 1月第1週のコメントで、『(旅行流通の)キーワードは「パーソナル」「エクスペリエンス」「コネクテッド」の3つだ』と書いた。

ここでは、旅を構成する要素は何なのかを考えてみたい。上品ではないが、「旅の3S」として サイトシーイング(観光)、ショッピング(買い物)、セックス(性)という考え方があったが、現代の旅行スタイルは多様化している。私が考える旅の要素は、もう少し広がりを持たせて「3E」で表現できるのではないだろうか。

(1)エクスペリエンス(体験)

          現地の文化、食、アクティビティを通じて、日常では味わえない新たな経験。

          例:現地の祭りに参加、地元の人と交流、特別な料理を食べる。

(2)エスケープ(非日常・解放)

          日常から離れ、新しい環境でリフレッシュする。

          例:海辺のリゾートでのんびり、温泉で癒やされる、大自然の中で過ごす。

(3)エンリッチ(Enrichment:自己成長・学び)

          旅を通じて視野を広げ、価値観を深める。

          例:歴史的な場所を訪れる、異文化を学ぶ、現地の言葉を少し話してみる。

 

最近の旅行者は「体験(エクスペリエンス)」や「学び」に重きを置く傾向がある。だから、エクスペリエンスがキーワードになるというわけだ。

 

しからば、もう一つの「パーソナル」という言葉には、どのような意味があるのだろう。一見シンプルだが、使われる文脈によって意味が変わるので、しっかり理解するのは意外と難しい。私の考える「パーソナル」とは、個人に関わるもの、または個人的な性質を持つものを指している。「一人ひとりに固有で、他者とは異なるもの」という意味合いが強い。

 

したがって、パーソナルとは、個人的なウォンツとニーズと思考と嗜好を表す、という定義になる。

「パーソナル=個人的なウォンツ(Want)、ニーズ(Need)、思考(Thought)、嗜好(Preference)」 という整理は、実際に「パーソナル」が指すものを具体的に捉えやすくしてくれる。

 この定義をさらに整理すると…

(1)ウォンツ(Want)  「欲しいもの」

         例:旅行に行きたい、新しい服が欲しい、美味しいコーヒーを飲みたい。

(2)ニーズ(Need)         「必要なもの」

         例:健康のために運動が必要、仕事でスキルアップが必要。

(3)思考(Thought)        「考え方や価値観」

         例:ミニマリズムが好き、環境問題に関心がある。

(4)嗜好(Preference)    「好みや選択の傾向」

         例:和食が好き、静かなカフェが落ち着く、SF映画が好き。

この4つを総合すると、「パーソナル」とは、その人特有の「欲求・必要性・考え・好み」の集合体 ということになる。

 

多様化して、モノからコトへの消費の時代となっている現在、団体旅行でなくて、個人のニーズとウォンツと思考と嗜好に基づいた(パーソナルな)体験(エクスペリエンス)の旅行が展開されている。

 

したがって、旅行会社は、かつてはやった物見遊山の団体旅行ではなくて、パーソナルでエクスペリエンスな旅行商品の販売が求められていることになる。

 

残るキーワード「コネクテッド」は、紙面の都合上、後で解説することとしたい。

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