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2024年 1月第2週 の 編集人コメント

 

最近、技術的負債(technical debt)という言葉が頻繁に登場する。そしてこの負債が特に多いのが旅行業界であると言われている。先週は、以下の3つのニュースが、技術的負債とその対処について解説する。

 

6. トラベルテックは安くない、それどころか金がかかる」では、技術的な負債を - 企業が交換するのではなく、アップグレードまたは回避し続ける技術の時代遅れの反復 -  と定義している。そして旅行が規模の面で世界の産業の中で5位にランクされているが、デジタル採用の地位はわずか20位であるという。

イノベーションに取り組みながら、現在の技術的な負債をどのように解消するか? その具体例について、PMSを含むホテルの管理システムプロバイダーCloudbedsの実際のケースを紹介している。

 

ホスピタリティ プロフェッショナルサービス プロバイダー H2cは、「11. オンライン直接予約の新記録、ホスピタリティのイノベーション促進」の中で、直接予約による顧客データのアクセシビリティ向上により、顧客管理の進展が見られるものの、テクノロジーのキャッチアップには未だ課題が残っていると指摘する。さらに、より一層のパーソナリゼーションやアンシラリー販売のアップセルの機会を逃してしまっているとも述べている。

 

また、航空会社ソフトウェア プロバイダーAccelyaのCRO(最高収益責任者)による投稿「14. 航空会社が旅行者の期待に応えるためのテクノロジー」は、航空会社の技術的負債について言及している。現代の旅行者は、予約から着陸までのシームレスな旅を求めており、自分の好みに合わせた体験(エクスペリエンス)を期待している。この変化に対応するには、航空会社が最先端の技術ソリューションを採用することが重要だと説いている。そしてNDC、One Order*、顧客データの活用強化、AIの利用、技術的柔軟性の受け入れ、の5つを重要なテーマを提示している。

*One Order = IATAが提唱する取引標準の一つ。航空運送における既存の3つのオーダー(予約、航空券、航空貨物)を統合し、単一の取引オーダーにまとめることを目的としている。これにより、効率性や顧客サービスの向上が期待されている。

 この他、「3. 世界消費者動向の旅行への影響」が面白い。Euromonitorは、すでに消費者の関心を引き、今年も注目され続ける可能性が高い消費者行動の傾向(トレンド)として、以下の6つの分野*を特定している。

(1) Generative AI(生成AI)

(2) Value Hackers(倹約思考)

(3) Greenwashed Out(偽善的サステナビリティ排除)

(4) Delightful Distractions(広がる気晴らし)

(5) Progressively Polarized(次第に変化する分極)

(6) Wellness Pragmatists(ウェルネス現実主義者)

*この記事では6つのトレンドの詳細が明示されていない。そのため編集人の推定で上記をリストしてある。

大きく括ればトラベルテック、サステナビリティ、パーソナリゼーションの3つが主要なテーマと考えられる。消費者動向へのアジャイルな対応が求められ、特にパーソナルな消費動向にますます気を配る必要があるということなのだろう。

 

これらのニュースを読むと、トラベルテックが猛スピードで進化し始めていることが分かる。そのブースターとなるのが生成AIだ。前掲「6. トラベルテックは安くない、それどころか金がかかる」の記事で、ホスピタリティ収益管理ソフトウェアのプロバイダーであるIDeaSのKlaus Kohlmayrは、「あなたのビジネスが5年以内に生き残るためには、それを可能にする技術が必要だ」と述べている。旅行会社の経営者たちは、変化の激しい消費者動向はもちろんのこと、テックにも精通し、果敢かつ迅速な決断を強いられる、難しいマネジメントを求められている。

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